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“サラ金化”するファミマ…加盟店「肥大化&大量契約更新」問題、3位転落の危機も

文=編集部
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ファミリーマートの店舗

 日本フランチャイズチェーン協会がまとめたコンビニエンスストア大手7社の2020年の売上高は、新規出店を含む全店ベースで19年比4.5%減の10兆6608億円だった。年間で全店売上高が前年実績を下回るのは、現在の方法で統計を取り始めた05年以来初めてのことだ。新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛が続き、オフィス街や観光地の店舗を中心に売り上げが落ち込んだ。

 一方、在宅勤務の浸透で自宅で過ごす時間が長くなり、まとめ買いが増えるなどしたため、1回当たりの買い物でいくら支払ったかを示す平均客単価は6.4%増の670円となった。身近なコンビニで冷凍食品や酒類を買う傾向が目立つようになり、客単価を押し上げた。マスクなど衛生用品の売り上げも好調だった。来店客数は10.2%減っており、これが売り上げの減少に直結した。

 20年末の店舗数は5万5924店。前年末比0.5%増と微増にとどまった。21年に入ってからも減収に歯止めがかからない。コンビニ大手3社の21年1月の既存店売上高は3社とも前年実績を下回った。セブン-イレブン・ジャパンは2%減で4カ月連続で前年割れ。ファミリーマートは5%減、ローソンは7%減だった。

 緊急事態宣言が再発令され、都市部を中心に客足がいっそう遠のいた。1月の客数はローソンが16%減、ファミマは13%減、セブンは12%減。客単価は3社とも高水準で推移している。食料品を自宅周辺のコンビニでまとめ買いする傾向が強まり、セブンは11%増、ファミマとローソンは各10%増だった。

 コンビニが店舗拡大を続けてきた時代は終わった。コロナ禍で変化した消費動向は簡単には元には戻らない。各社とも戦略の見直しを迫られている。

ファミマは業界初の消費者金融に進出

 コンビニチェーンは10年前の東日本大震災をきっかけに出店が急激に増えた。東日本大震災では、被災地への商品供給を支える生活インフラとしてコンビニが注目されたことが背景にある。11年度から13年度までの3年間で新規の出店を急激に増やし、その数は大手7社で1万店近くに達した。

 当時出店した店の多くが21年からフランチャイズ契約の更新の時期を迎える。加盟店のオーナーの高齢化が進んでいるほか、24時間営業による負担が問題視されており、「契約更新に応じない店があるのではないか」(関係者)と危惧されている。セブンはオーナーとの契約期間は15年だが、ファミマとローソンは10年だ。当時、増えた店舗がこの春以降、契約更新を迎える。ローソンはこの春から契約期間を5年間に短縮できるようにした。

 ファミマは固有の問題を抱えている。16年、同業のサークルKサンクス(CKS)を傘下にもつユニーグループ・ホールディングスと統合して業界2位に躍り出た。相次ぐM&A(合併・買収)で肥大化した約1万6000店の店舗網を維持できるかどうかが喫緊の課題だ。

 CSKからファミマに転換した加盟店のオーナーは、転換時に5年契約を結んだため、全体の約3分の1にあたる5000店超が21年後半から23年にかけて契約更新時期を迎える。ユニーとの統合直後の16年に社長に就任した澤田貴司氏(3月からの新体制では副会長)は、大量の契約更新を「ファミマ固有の課題」ととらえ、加盟店オーナーの“つなぎ留め策”を打ち出してきた。

 20年3月「店舗再生本部」を新設した。販売不振に陥ってオーナーが経営から身を引く店舗を、いったんは直営化し、立て直しがなった暁に再びFC加盟店とするための本部だ。高齢化したオーナーの事業をほかの人が引き継ぐ条件を緩やかにするなど、事業を続けやすい仕組みづくりを進め、店舗数を維持するための道筋づくりを進めてきた。

 加盟店の離脱は事業の根幹を揺るがす事態だ。

「ファミマが加盟店の引き留めに失敗すれば、店舗数でローソンに抜かれ、3位に転落することもありうる。細見研介・新社長は、初っ端から正念場を迎える」(ファミマ関係者)

 加盟店をつなぎとめるためには、客を呼び込める魅力的な店にしなければならない。店舗数で勝負してきたコンビニ本部の経営者の発想の転換が必要になる。

消費者向けの金融事業に参入

 ファミマは2月17日、今年夏に消費者向けの金融事業に参入すると表明した。自社のスマートフォン決済アプリ「ファミペイ」を活用し、小口の貸し付けや購入代金の後払いサービスを始める。貸し付けは数万円を想定し、ファミペイで申し込むことができる。アプリに登録した銀行口座に、即日入金する。後払いは、ファミペイのチャージの残高が足りない場合でも最大10万円まで買い物ができ、買い物や公共料金の支払いなどを翌月以降にまとめて決済できる。21年4月に施行される改正割賦販売法で10万円以下を提供する決済サービス事業者の参入要件が緩和される。これを受けて子会社、ファミマデジタルワン(東京・港区)が事業者となり、夏以降に金融サービスを始めることにしたわけだ。

 与信管理は新生銀行傘下の貸金業子会社、新生フィナンシャル(東京・千代田区)が行い、人工知能(AI)スタートアップ企業の、セカンドサイト(東京・中央区)が協力する。ファミペイの購買履歴などをAIで分析し、利用者ごとの返済能力を事前に審査する。個人に小口の資金を貸し付けるのは、コンビニの店頭などでの購買意欲をかき立てるのが狙いだ。

 大手コンビニチェーンではセブン-イレブンが01年、セブン銀行でATMサービスを開始。ローソンも18年にローソン銀行を立ち上げて銀行業に参入した。ファミマは大手コンビニで唯一、銀行業の免許を持っていない。

 金融とITが融合したフィンテックの台頭によって金融サービスの垣根が低くなった。ファミマは銀行機能を持たず、銀行など金融機関や親会社の伊藤忠商事と連携しながら、ファミペイを通じて総合的な金融サービスを目指す、としている。

 ファミマの小口金融進出には、ネット上で「コンビニのサラ金化」と驚きの声が上がる。だが、これは、伊藤忠の岡藤正広会長CEOの強い意向の反映だ。消費者金融は多く貸すことよりも貸し金をいかに効率よく回収するかのノウハウの優劣で勝負が決まる。貸し倒れ率をどうやって引き下げるかにかかっている。

 ファミマの消費者金融参入は、吉と出るか凶と出るのか。

(文=編集部)

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