10月22日に行われた衆議院総選挙にて、自民党は単独で過半数(233議席)を上回る議席を確保した。経済の側面から選挙の結果を考えると、アベノミクスが国民から支持されたといえる。選挙後、経済界からも個人消費の喚起や生産性向上に向けた取り組みを期待する声が上がっている。選挙翌日の23日、日経平均株価は前週の終値から239円程度上昇し、2万1,696円65銭で終了した。総じて、自民党政権による政治・経済運営が続くことを多くの市場参加者は好感している。
しかし、この状況に楽観すべきではない。国内企業が直面する状況はかなり厳しいからだ。最大の問題は人手不足だ。日産自動車での完成車の無資格検査問題などは、人手不足と無関係ではないだろう。
なぜ、常識では考えられないような不正が続いてきたか、さまざまな意見が出ている。そのなかでひとつの見方を示すとすれば、わが国の多くの企業が現状維持の経営を優先してきたことがあるように思える。
人手不足が深刻化するなかで、多くの企業は限られた人員のなかで操業度を維持し、一定の品質を維持しようとしてきた。その取り組みでは需要に対応しきれなくなったとき、新しい生産方法を実現するのではなく、“その場しのぎ”の行動が現場の判断でとられはじめたのではないか。それが、本来の基準やルール、法令を無視した行動の常態化につながった一因かもしれない。
経営責任を無視したままで進む、不正撲滅論
日産自動車と神戸製鋼所の不祥事、商工組合中央金庫(商工中金)の不正融資問題に関する報道を見ていると、常識では考えられないことが組織内部では“当たり前”になっていたことがよくわかる。国交省から指摘された後も、日産自動車は無資格での検査を続けていた。問題の根はかなり深そうだ。
こうした“ありえない”事態の発覚を受けて、多くの識者などが「企業内部で自己浄化作用が機能することを期待する」といった指摘を行っている。ここでいう自己浄化とは、不正を真摯に反省し、業務の改善を進めるということだろう。また、内部通報制度などを意識した指摘もあるようだ。わが国のモノづくりでは、現場の権限が強かったあまりに十分な経営管理が行き届かなかったといった見方もある。