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しかし、自己浄化作用が機能するのであれば、より早い段階で無資格検査やデータ改ざんなどの不正が発覚してもよかったのではないか。数十年前から神戸製鋼所で改ざんが行われていた可能性があることを考えると、企業内部の自己浄化を期待するのは現実的ではない。また、内部通報制度を強化して不正をなくそうとするなら、不正を通報した従業員に対して報奨金を支払うなど、不正の発見につながるような制度の策定も求められる。そうした議論なくして、自己浄化は無理だろう。終身雇用などの雇用慣行が残るなかで、内部通報の奨励がうまくワークするとも思いづらい。
見方を変えれば、現在の企業不祥事に関する議論は、「経営の全責任は経営者にある」という基本的な考え方を軽視しているようにも映る。経営者は企業の最高意思決定者だ。経営者が、品質の管理を現場任せにしてきたのである。この基本的な認識に基づいて議論を進めない限り、不正の撲滅は進まないといっても過言ではないだろう。
重要性高まる機関投資家の役割
このように考えると、経営者が何をしなければならないかを具体的に議論していくことは、個別企業だけでなく経済全体で取り組まなければならない課題といえる。それに向けたひとつの取り組みに、ガバナンス=企業統治の強化がある。理論上、社外取締役の導入を進めることや指名委員会等設置会社に移行することは、第3者の視点を通して企業の経営を議論し、評価することにつながるだろう。
こうした取り組みが必要と考えられる背景には、経営の“見える化”を図ることで、企業経営者が従来以上に経営のリスクに対して敏感になる(イコール、経営責任を意識づけられる)との考えがある。それによって、特定分野への過度な経営資源の配分や、不適切な経営管理が改善されるといった効果が期待される。
経営を改善するためには、経営者の取り組みに加えて機関投資家の役割も重要だ。アベノミクスが企業統治の強化を重視してきたこともあり、近年の国内株式市場では機関投資家が積極的に企業の経営に対して“物申す”ことが増えてきた。一部では、親会社である大手金融機関の意向とは異なる議決権の行使に踏み切る運用会社も出てきた。こうした取り組みを増やし、経営者は株主から企業価値の増大を負託された存在(受託者)であるとの社会的な認識を形成していくべきだ。
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