「物言う株主」として一世を風靡し、「村上ファンド」の通称で知られたM&AコンサルティングやMACアセットマネジメントといったファンドの出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントの動きには要注目だ。
なぜなら、エフィッシモは再編のにおいに敏感だからだ。再編によって事業の効率化が進めば株価は上昇し、高値で売り抜けることができる。エフィッシモは、鉄鋼の電炉業界を次のターゲットにした。
エフィッシモは、6月15日付で東京鐵鋼の筆頭株主に躍り出た。エフィッシモが6月22日に関東財務局に提出した大量保有報告書で明らかになった。保有比率は8.97%で、これまでより1.69ポイント持ち株が増加した。
エフィッシモが筆頭株主になったことから、再編が早まるとの期待が高まり東京鐵鋼株が買われ、6月23日の株価は一時、前日比63円(16.4%)高の448円に急騰した。
東京鐵鋼は10月1日付で株式を5株から1株に併合した。それに先立ち9月27日から株価表示が変更になり、従来の株価の5倍になった。今年の最安値は10月30日の2131円となる。
東京鐵鋼は8月28日、同業の伊藤製鐵所と経営統合に向けた協議を開始すると発表した。会見した東京鐵鋼の柴田隆夫取締役は、エフィッシモが統合を後押しした可能性について問われると、「特に関係はない」と否定したが、株式市場はエフィッシモの圧力が再編に押し出したと受け取った。
両社とも独立系の電炉メーカーで、コンクリート建築に使われる鉄筋(小型棒鋼)を生産している。東京鐵鋼の2017年3月期の売上高は435億円で、電炉業界第9位。一方の「伊藤製鐵所は、17年同期が216億円で業界12位。小型棒鋼のシェアは共英製鋼、JFE条鋼に次いで東京鐵鋼が3位、伊藤製鐵所が4位。統合すればシェアは2ケタに乗る。
両社は05年、東北地方で共同販売会社を設立するなど、生産・販売などで協力関係にある。株式を持ち合っており、東京鋼鐵が伊藤製鐵所株の2.17%、伊藤製鐵所が東京鋼鐵株の0.32%を保有している。統合が実現すれば、17年3月期ベースの単純合計で売上高は651億円。新日鐵住金系の大阪製鐵(621億円)を抜いて電炉7位になる。