2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、東京のホテル建設ラッシュが止まらない。野村不動産は「NOHGA HOTEL(ノーガホテル)」のブランドでホテル運営に参入する。「野村」と思いがけない幸せを意味する「冥加」を掛け合わせた造語の「ノーガ」をブランド名とした。
野村不動産は新設した野村不動産ホテルズを通じてホテル事業に参入する。第1弾は、2018年秋に東京・上野にノーガホテルを開業する。客室数130室の宿泊特化型。宴会場などの設備はない。平均客室単価は2万円前後で、宿泊客の半数は外国人を想定。初年度の売上高は8~9億円を見込んでいる。
今後、東名阪の3大都市圏に2000室を展開。各ホテルは100~150室が基本で、ひとつの拠点に投下する事業費は50億円としている。
ホテル事業には、土地持ち企業の鉄道や不動産・デベロッパーなどが相次いで参入した。大手不動産では三井不動産、三菱地所が野村不動産に先行している。
三井不動産は10月5日、東京・銀座8丁目の旧日航ホテル銀座の跡地に、宿泊特化型の新ブランド「ホテル ザ セレスティン銀座」を開業した。三井不動産は都市型ホテル「三井ガーデンホテル」や宿泊特化型の「セレスティン」で5800室を提供しているが、これを20年までに1万室規模に拡大する計画だ。
三菱地所はグループ会社を通じて「ロイヤルパークホテル」を運営している。
野村不動産(持ち株会社は野村不動産ホールディングス)は売り上げ規模では、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産ホールディングスに次いで5位。上位4社が総合不動産と括られるのに対して、野村不動産は、これまで「プラウド」マンションの一本足打法とみられてきた。ホテル事業に参入して「ノーガ」を「プラウド」と並ぶ、有力ブランドに育てることを狙っている。
野村不動産のホテル参入に関して「なぜ今頃、ホテルなのか」と、不動産担当のアナリストからは疑問の声が聞こえる。
不動産サービスの世界大手、米CBRE東京本社がまとめた日本のホテル市場の動向調査によると、17年から20年ごろまでに主要8都市で、16年対比で約6万5000室、26%増える。東京は25.6%増の約2万5000室が新たに供給される。
みずほ総合研究所の調査を基にした試算では、20年に東京で1万6700室が不足することになっているが、米CBREのデータでは東京は“ホテル過剰”になる。東京オリンピックの頃には、ホテルはつくりすぎになっているということだ。
オリンピック特需をビジネスチャンスと捉えて空前のホテル開発ラッシュになっているが、逆に供給過剰になる懸念が強まっているのだ。東京オリンピック後の景気後退期には、閑古鳥が鳴くシティホテルが続出することになるかもしれない。
野村不動産のホテル進出は吉と出るか凶と出るか。後者の可能性を否定できない。
(文=編集部)