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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

税務署は、嘘をつく滞納者をこう追い詰める!

文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人
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執念の捜索で差押え

 そもそも、なぜ滞納になったかというと、数年前に税務調査が行われ、売上除外を指摘したところ、修正申告に応じず、更正処分を受け、そのまま追徴税額の納税を行わなかったためです。ちなみに、更正処分とは、申告内容に誤りがあった場合に、国税側が納税額の決定を行うものです。通常は、納税者の自主的な修正申告を勧めますが、これに応じなかった場合は、更正処分が行われます。

 つまり、日常的に調査や納税に非協力的な人物であることがわかります。ここで、滞納処分をするに当たって徴収官は考えました。経理担当者の預金口座に入金されている金額が、滞納者のものであるとして滞納処分を行うには、事業譲渡そのものが偽装であることを証明しなければいけません。通帳やキャッシュカード、印鑑の管理者が誰であるかを確認し、不動産の売買代金の受け渡しも確認する必要があります。そこで、証拠書類保全のため、関係先に一斉に踏み込むことになりました。捜索日当日、徴収官は複数の班に別れて、滞納者の住んでいる家、すなわち事務所に踏み込みました。

 滞納者はお決まりの「令状はあるのか」と言いましたが、滞納処分に裁判所の令状は必要ありません。社長のカバンからは、経理担当者名義の通帳やキャッシュカードを見つけ、そのことについて経理担当者から聞き取りを行います。当初、通帳などは預けているだけだと主張しましたが、暗証番号を諳んじることができず、追求に観念して事実を話してくれました。

 口座は、滞納者に頼まれて開いたものであること、さらに経理担当者の自宅には、滞納者が作成した「税務署からの差押えを受けないために」という“あんちょこ”があること、不動産の移転登記や、売上の入出金フローを滞納者から指示されていることがわかりました。

 一方、滞納者は、銀行での入出金は経理担当者に頼まれてやっているだけだと主張しました。しかし、経理担当者の証言を伝えると、事業譲渡と不動産の売買が偽装であったことを認め、自宅に隠されていた現金2000万円のほか、絵画や薄型テレビなどの動産を差し押えることができたのです。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』 私たちの暮らしに深く関わる「税金」。 本書では、難しく感じる税金の話を、人気マンガを例にやわらかく解説 amazon_associate_logo.jpg

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