超高齢社会を迎える日本。2025年には、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、人口の4人に1人が75歳以上になることが予想されている。そんななか、ひそかに需要が高まっているのが補聴器だ。
聴力を補うための医療機器である補聴器。当然、装用は難聴者が対象となるが、15年に日本補聴器工業会が発表したデータによると、難聴者率は55~64歳で10.8%、65~74歳で18%、74歳以上で43.7%と、年齢が上がるにつれて高まっている。超高齢社会の到来によって、補聴器を必要とする人の絶対数が増えていくことは明らかだ。
その証拠に、補聴器の国内出荷台数は06年の45万8642台に対して16年は56万1557台と10年間で約22%もアップしており、今後もさらに伸びることが予想される。
世界初のクラウドによる遠隔調整が可能に
近年、注目されているのが次世代型の補聴器である「スマート補聴器」だ。補聴器をiPhoneとBluetoothでリンクすることで、スマートフォンの画面でボリュームや音質などを調整することができ、通話や動画の音声も補聴器に転送できる。いわゆる「IoT」(Internet of Things=モノのインターネット)製品の一種である。
このスマート補聴器を14年に世界で初めて発表した、大手補聴器メーカーのGNヒアリングが、今年6月に同機種の最新型である「リサウンド・リンクス3D」を日本向けに発売した。
初代の「リサウンド・リンクス」、2代目の「リサウンド・リンクス2(スクエア)」とは何が違うのか。同社の日本支社であるGNヒアリングジャパンでマーケティング部長を務める池田慶弘氏は、こう説明する。
従来の補聴器はユーザーが自分で調整できる音の範囲が決まっており、大きく調整を変えるときは販売店に出向き、耳の検査を行ってデータをつくり変える必要があった。しかし、「リサウンド・リンクス3D」はスマホのアプリで遠隔調整が可能だ。クラウド経由で専門家とやりとりを行い、新たなデータを補聴器に直接ダウンロードできる。
ユーザーは高齢者が多いだけに、スマホをうまく操作できるかが懸念されるが、調整はいたって簡単。そのため、高齢者にも広く受け入れられているという。「リサウンド・リンクス3D」にするために、わざわざスマホに買い替える人もいるそうだ。難聴を理由に外出を控える高齢者もいるというが、これによって活動の幅を広げることにもつながる。
日本の補聴器普及率は圧倒的に低い
スマート化前の機種に比べて初動売り上げ150%増を記録した初代と同様に、この「リサウンド・リンクス3D」の売り上げも「順調に推移している」と池田氏。「今や、弊社で販売している補聴器のほとんどがスマート補聴器ですよ」と手ごたえを語るが、安堵感はない。