足元で、大塚家具の業績回復が見えてこない。同社の大塚勝久元会長とその長女・久美子現社長の対立に伴う経営の混乱が、同社の社会的なイメージを大きく傷つけてしまった。新社長の下で中古家具の取り扱いなど、従来の戦略とは異質な取り組みを進めている。しかし、これまでのところ、消費者はそうした変化をあまり受け入れてはいないようだ。「気の利くアドバイスをくれる店員が、昔に比べると少なくなった」との声を耳にすることが多い。それは、大塚家具が大切にしてきた顧客との関係が希薄化していることを示す兆候といえる。
11月6日、貸会議室大手のティーケーピー(TKP)が、大塚家具に10億円程度の出資を行うと報じられた。株式市場の専門家のなかには、「TKPの出資は大塚家具の経営が一段と悪化している証拠」との見方もあるようだ。経営再建の道は、まだ予断を許さない状況なのだろう。
TKPとの連携と大塚家具の特色
2005年に創業したTKPは貸し会議室を中心に、IT技術を活用して遊休資産から付加価値を生み出すビジネスを行っている。同社は家具を扱う企業ではない。大塚家具とビジネスモデルが異なる。その点で、同社と大塚家具との提携の効果が見えにくい。TKPはオフィス需要の取り込みのために、大塚家具の売り場の一部を活用することができる。それはTKPの成長にとっては重要だ。
逆に大塚家具にすると、同社が必要以上の売り場面積を抱えているともいえる。売り場を有効に活用できなければ、損失を食い止めることは難しい。同社は今後も継続的にリストラを進めることを余儀なくされるかもしれない。さらなるリストラを回避するためには、大塚家具が顧客の満足度を高めなければならない。それが収益力の回復には必要不可欠だ。
顧客の満足度を高めるためには、大塚家具でしか味わえない満足度を生み出す必要がある。もともと大塚家具は、顧客との関係性を重視してきた企業だ。その営業スタイルを築き上げたのが、現社長の父親である大塚勝久氏だった。同社の親子間の発想の違いに関しては賛否両論あるものの、社長交代以前のほうが経営の内容は良かったと考える株式市場の関係者も少なくはない。