京都大学の名物ともいわれる立て看板、通称「タテカン」に対して京都市が撤去の指導を強めていることが議論を呼んでいる。
京大の門の前、そしてキャンパスを巡る塀や柵には立てかけられた大きなタテカンを常時見ることができる。春の新学期には特に数を増すが、それ以外の時期でも京大からタテカンが絶えることはない。12月初め現在で40あまりのタテカンが設置されているそうだ。
巨大なものは横6メートル、高さ3メートルに及ぶものもあり、いずれも一品ものの手づくりで、テキストやイラストはペンキを使った毒々しいとも取れる表現のものが多い。
さて、京都市当局が目指そうとしているのは観光地・京都の「景観」維持だ。つまりタテカンは美的景観にはそぐわないという判断がある。一方、京大OBからあがっている擁護の声は「タテカンは京大の文化だ」というもの。タテカンの設置は遠く1960年代の全共闘時代(過激な学生運動のことだ)に始まり、半世紀の長い間親しまれ、いまや京大と一体の光景になっている、というのだ。
しかし両者の主張が見落としているのは、「表現の自由」というより大きな視点だと私は思っている。
京都市は景観づくりの一環として、屋外広告の表現を規制してきた
タテカンを責める側の京都市は、2012年から京大に対してその撤去を口頭指導してきたという。去る10月には文書で指導したことにより、問題が顕然化した。京都市役所広告景観づくり推進室は、次の2つの点を指導したとされる(12月11日放送のテレビ番組『羽鳥慎一モーニングショー』<テレビ朝日>より)。
・指導対象1:外に向かって置かれているタテカンは市長への申請、許可が必要であり、道路の不法占用にもあたる。
・指導対象2:敷地のなかに立てられているが、外からも見える。
またタテカンは強固な設置物でないので、倒れるなどして通行人に危害を与える恐れもあるとしている。
同番組に出演していたコメンテーターの玉川徹氏は京大OBで、タテカン擁護派だった。
「台風なんか何度だって京都に来ている」
京都市がタテカンについて京大を指導した法的根拠として、タテカンは常時あるいは一定期間継続して屋外で公衆に表示される「屋外広告物」に該当すると判断したという。京都市がなぜ屋外広告物を規制するかというと、07年に施行した同市の「新景観政策」によるものだ。その基本方針として次のように謳っている。