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ラクスル、累積赤字36億円で上場困難か…「M資金」報道の玉塚氏が役員就任

文=編集部
ラクスル、累積赤字36億円で上場困難か…「M資金」報道の玉塚氏が役員就任の画像1「Thinkstock」より

 2015年頃からIPO(新規株式公開)の噂が出ていながら、いまだに上場を実現しない企業がある。インターネット印刷のポータルサイトを運営するラクスルだ。

 そのラクスルが、ローソン元社長の玉塚元一氏を社外取締役に迎えた。玉塚氏は、ユニクロを運営するファーストリテイリングの社長を2002年から3年間務めたほか、企業再生支援会社リヴァンプを創業した経験を持つ。10年にローソンに入社し、14年に社長、16年に会長に就任したが、三菱商事がローソンを子会社にしたのに伴い17年5月末に会長を退任した。

 だが、明らかに経営者としては不完全燃焼だ。ファーストリテイリングの社長は解任され、ローソンも不本意な辞め方をした。

「週刊新潮」(新潮社/4月27日号)は、『ローソン「玉塚会長」の退任の裏に「M資金」と「美人詐欺師」』とのタイトルでスクープ記事を掲載した。スター経営者である玉塚氏がローソン会長を退任したのは、“M資金”の世界で蠢く怪しい面々とかかわりがあったからだと、いわんばかりの内容だった。

 ローソンを辞めた玉塚氏は、6月からデジタル製品のテストを行うハーツユナイテッドグループの社長に就任した。ヤマハ発動機など複数の社外取締役を兼務しているが、今度はラクスルの社外取締役に就いた。

 産業界で豊富な経験を持つ人物がスタートアップ企業の役員になるのは珍しい。

第三者割当で巨額増資しながら、資本金を1億円に減資

 ラクスルの創業者、松本恭攝(やすかね)社長は1984年10月生まれ。富山県出身。家族・親戚はすべて公務員。慶應義塾大学商学部1年生の時に、学生団体の立ち上げに参加したことをきっかけに、無から有を生み出すことの面白さを知った。

 アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの演説に感銘を受けてシリコンバレーに行き、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という“ジョブズ教”の信者となる。

 2008年に大学を卒業して、外資系コンサルタント会社のA.T.カーニーに勤めた。印刷業界の革新による新たなビジネスの可能性に手応えをつかんだことから起業を決意した。

 09年10月、ラクスル株式会社を設立。チラシなどの小口印刷をネットで受注し、全国の中小印刷会社の空き設備を使って印刷するというビジネスだ。

 業務拡張のため、第三者割当増資により資金を調達した。12年に2億3000万円、14年に15億5000万円、15年40億円。16年には、既存株主である日本政策投資銀行、オプト、グローバル・ブレイン、GMOベンチャーパートナーズ、Global Catalyst Partnersから第三者割当増資で20億5000万円の資金を調達した。

 15年には世界で最も革新的なテクノロジー・ベンチャー企業100社を選出するアワード賞を受賞した。印刷業界の遊休設備を活用するシェアリング・エコノミーというビジネスモデルが評価された。

 松本氏は「フォーブスジャパン」(アトミックスメディア)が選ぶ『日本の起業ランキング』で16年に2位、17年3位と2年連続でベスト10入りを果たした。フォーブス誌は「日本にも現れた“ジョブズの申し子”」と絶賛した。

 ラクスルは、ネットで、しかも割安価格で印刷物を注文できる「ラクスル」が主な事業。15年末には空き時間を待つトラック運転手を活用した運送サービス「ハコベル」を始め、物流事業に参入した。17月7月、ヤマトホールディングス(HD)と資本提携。ヤマトHDは既存株主からラクスル株の一部を譲り受け、少額出資した。

 ラクスルがIPOを発表するとの期待が高まっていたが、いまだに音沙汰なし。実は、上場できる財務内容ではなかったことが明らかになってきた。

 ラクスルは6月16日、官報に資本金減少の公告を出した。6月20日付で38億4555万円減資して、資本金を1億円にするという内容だ。

 減資公告には、16年7月期の貸借対照表と損益決算書が記載されていた。それによると売上高は50億5000万円、営業損失は14億3000万円、純損失は14億4000万円、累積赤字は36億8000万円に達していた。とても上場できる財務内容ではない。上場益を当て込んで出資した投資ファンドは、減資を迫られて憤懣やるかたなしだろう。

 ラクスルのアイデアは斬新だが、経営は安定していなかった。株式会社は儲けることが基本だ。会社を設立して8年たっても儲けるけることができないビジネスは存在理由がない。経営体制の再構築のための指南を受けるため、玉塚氏を社外取締役に招いたわけだ。

 玉塚氏は、組織を基本から叩き直し、ラクスルの上場にこぎつけることができるのだろうか。
(文=編集部)

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