「今年1番のブラック企業」を決める「第6回ブラック企業大賞2017」(運営:ブラック企業大賞企画委員会)の授賞式が12月23日、都内で行われた。
引越社・引越社関東・引越社関西が大賞を受賞し、業界賞には新潟市民病院、特別賞には大成建設・三信建設工業、ブラック研修賞にはゼリア新薬工業、ウェブ投票賞には日本放送協会(NHK)が選ばれた。
大賞発表前に各ノミネート企業の選定理由が紹介され、シンポジウムが行われた。いなげやの志木柏町店では2014年5月に42歳の男性社員が過労死。労働基準監督署によって労災認定され、遺族側代理人が会見したことで明るみになった。パナソニックでは富山工場に勤務する40代男性社員が16年9月自殺。過労による自殺と認定された。
新潟市民病院では16年1月に37歳女性研修医が睡眠薬を服用して自殺した。女性の月平均残業時間は187時間、もっとも長い月で251時間だった。NHKでは13年7月、当時31歳だった女性記者がうっ血性心不全で死亡した。死因が長時間労働による過労であると労災認定された。NHKでは記者については「事業場外みなし労働時間制」を適用していた。
大成建設は東京オリンピック・パラリンピックで使用する新国立競技場の建設工事における元請け企業で、三信建設工業はその一次下請け企業。今年3月、三信の当時23歳の新人男性社員が自殺した。長時間労働による過労が原因と労災認定された。
大和ハウス工業では17年9月、埼玉西支社に営業職として勤務していた20代男性に違法な時間外労働をさせ、労基署から是正勧告を受けた。同社は11年にも是正勧告を受けており、そのときは男性社員がうつ病を発症し、退職を余儀なくされた。
ヤマト運輸は16年12月、セールスドライバーに対する残業代未払いで労基署から是正勧告を受けた。17年5月にはパート従業員の勤務時間改ざんと賃金未払いがあったとして、やはり是正勧告を受けている。
引越社・引越社関東・引越社関西は、男性営業社員をシュレッダー係に配転したり、懲戒解雇するなどしていた。今年8月、会社側の行為は、男性が労働組合に加入したことへの報復であり、不当労働行為であると東京都労働委員会が認定した。同社は15年にもノミネートされ、「ウェブ投票賞」と「アリ得ないで賞」を受賞している。
ゼリア新薬工業では、13年4月にMR(医薬情報担当者)として入社した当時22歳の男性社員が新人研修受講中の5月に自殺した。研修は人材コンサルタント企業ビジネスグランドワークスが請け負い、その講師からかつてのいじめ体験を大勢の前で告白させられたりなどした。それにより精神疾患を発症したとされる。今年8月、ゼリア新薬と同研修企業講師らを相手取り、損害賠償請求を提訴した。授賞式には被害者の父親が出席し、被害者の無念を訴えた。
なお、授賞式後のシンポジウムでは、来年の通常国会で審議される予定の「働き方改革関連法案」で裁量労働制が拡大されるのではないかと危惧する声が出た。また、労働基準監督署の職員が不足しているとの指摘もあった。
(文=横山渉/ジャーナリスト)