引退する中小企業経営者が知っておきたい「廃業のデメリット」と「M&Aのメリット」
2017年8月に創業した株式会社FUNDBOOK(ファンドブック)。同社が手掛けるのはM&A(企業の合併・買収)アドバイザリー事業だ。その事業の特筆すべき点は、「中小企業経営者の問題解決に特化したM&A」を主軸にしているところにある。
そんな株式会社FUNDBOOK代表取締役CEO(最高経営責任者)であり、『M&Aという選択』(プレジデント社)の著者である畑野幸治氏は「経営者や従業員が幸せになれるM&A」という理念を掲げている。
第3回となる今回は、引退を考える中小企業経営者にとってM&Aが最善策である理由や、M&Aが中小企業にもたらすメリットについて話を聞いた。
なぜ、引退を考える経営者にとって「M&A」が最善の選択肢なのか?
――そもそも、M&Aはどういった目的で活用されるものなのでしょうか?
畑野幸治氏(以下、畑野) ひとつは、企業の成長戦略のために活用されます。新たな事業を立ち上げるのに、ゼロから始めるのか、事業を買って始めるのか。両者には、スピードにおいて圧倒的な違いがあります。また、株価対策という側面もあります。ファイナンスの観点からいえば、M&Aは成長戦略として絶対に置いておくべき選択肢です。
もうひとつは、中小企業経営者が自身やその会社で働く従業員、またその家族に負担をかけずに引退するための手段です。あまり知られていませんが、M&Aは経営者の引退方法としていくつかある選択肢のなかで、オーナー利潤の確保と会社の継承ができる現実的で最善の方法なのです。
畑野 それにお答えするには、経営者が退く際にはどのような選択肢があるか、ということから考える必要があります。基本的に、選択肢は「株式上場」「事業承継」「廃業」「M&A」の4つしかないというのが私の考えです。
まず、このなかで避けるべきなのが「廃業」です。なぜなら、経営者の方々の手元にはほとんど資産が残らないですし、従業員の方々にも大変な苦労を強いることになるからです。
詳しくお話しすると、廃業を選択すると、債権の回収と債務の支払いをしていきながら、会社の簿価上の資産を売却して現金化することになります。たとえば、アパレル会社や工場などの製造業の場合、貸借対照表(B/S)上の資産は商品の下代といって、仕入原価が計上されているんです。それらをすべてキャッシュ化するのですが、材料や商品は二束三文にしかならないことがほとんどです。機械設備などは型落ちしていて値が付かないこともあります。
また、清算が完了するまでは人件費や設備維持費などのランニングコストもかかり、すべて清算していくと逆に債務超過になることもあります。
これだけでもデメリットは相当なものですが、さらに立て続けにやってくるのが税金の問題です。まず、売却して残った資産は株主への配当に充てられますが、ここで解散決算をして法人税として約40%が必要です。その後、配当課税、さらに相続となれば、相続税も必要です。