引退する中小企業経営者が知っておきたい「廃業のデメリット」と「M&Aのメリット」
経済動向から「M&Aにとって最良のタイミング」を見極める
――今は、M&Aにとって良いタイミングなのでしょうか?
畑野 はい。M&Aは業績が伸びてきているタイミングで売ることが最良です。下降トレンドになったときの売却となると、それ以前なら倍の価格で売れたものが暴落してしまう可能性がとても高いのです。
日本のマーケットは今、日経平均株価が2万3000円を超えてきています。世界経済も伸びているといわれています。しかし、マーケットが急激な景気後退を招くことなく安定的に成長した歴史というのは、日本にも世界にもないんです。ということは、どこかでマーケットを傷つける材料が生まれると、需給不安で一気に暴落するのは間違いありません。
すると、金融機関は緩和から引き締めに転じ、同時に実需は落ちて消費のトレンドは株価とともに下落していきます。そうなれば、業績難の会社も出てくるでしょう。しかし、そうなってからでは、会社を売ろうと思っても買い手も見つからないし、売れなくなる可能性が非常に大きい。だから、マーケットが比較的安定している今は、良いタイミングだといえます。
日経平均が永遠に3万円前後を維持する可能性もゼロではありませんが、歴史を振り返れば、その可能性は極めて低い。なので、経営者として今の経営状態と経済動向をリンクして見ておくべきだと私は考えます。
――自社の経営状態と併せて、経済動向にも注目しておくことが大切なんですね。ところで、2020年には東京オリンピックが開催されますが、オリンピックが特需もしくはクラッシュの要因になると思いますか?
畑野 私は、まったく関係ないと考えています。日本が金融を引き締めていく要因は、リーマン・ショックやチャイナ・ショックのような地政学的、外交的な海外のリスクにさらされるときなんです。
そもそも日本は貿易収支が黒字ですが、海外でクラッシュが起きると貿易で収益を上げている国が赤字になりやすくなります。つまり、日本の為替や金利は世界経済に左右されやすいのです。
したがって、オリンピックの特需というのは絵に描いた餅だと思っています。これだけのマーケットがオリンピックというイベントひとつで支えられることはないですし、実際、日銀は黒田東彦総裁になってからETF(上場投資信託)だけでも約14兆円買っていて、株式も約50兆円買っています。