2年前に生まれた「横丁ルネサンス」という言葉は、昭和的な飲食街であるかつての横丁が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)への投稿や出会いを楽しめる場所に変化したことを表すものだ。
そして今、この横丁の新たな形態として注目を集めているのが、はしご酒ならぬ“はしご肉”を楽しめる「肉横丁」というジャンルである。代表格といえる「渋谷肉横丁」が話題になったことは記憶に新しい。
その渋谷肉横丁に続き、昨年10月には新宿に新たな肉横丁がオープンして人気を集めているという。実際に訪れて、味やコストパフォーマンスを検証した。
都内3番目の“肉のテーマパーク”
肉横丁とは、肉の専門店が集まったいわば「肉のテーマパーク」。肉好きにとってはたまらない場所であり、「肉好きの聖地」などと呼ばれることもある。
その元祖は、2010年9月1日にオープンした全26店舗の渋谷肉横丁。これに続いたのが、16年6月に誕生した立川の「旭日食肉横丁」(全4店舗)だ。17年10月に新宿にオープンした「新宿名店横丁」は、都内では3番目の肉横丁となる。
肉横丁の醍醐味は、通常の横丁と同様にはしご酒ができることに加えて“はしご肉”が楽しめること。牛肉、豚肉、鶏肉、ラム、さらにステーキ、焼き鳥、ジンギスカンと、さまざまな肉の種類や食べ方を堪能することが可能なのだ。
もちろん、通常の横丁のように、見ず知らずの人々と酒を酌み交わし、ゆるいコミュニケーションを楽しむこともできる。実際、渋谷肉横丁は肉料理のバリエーションの多さや味だけではなく、新たな出会いの場としても話題になり、メディアで大きく取り上げられた。
では、オープンから数カ月がたった新宿名店横丁の味やコスパ、雰囲気はどうなのか。
希少なモモ肉の塊を炭火で焼き上げたステーキ
新宿名店横丁は、居酒屋「庄や」などを展開する大庄のブランドを1フロアに集結させた業態だ。
場所はJR新宿駅西口に直結する新宿パレットビル地下3階。全5店舗からなり、牛肉、馬肉、羊肉、鶏肉、ホルモンの専門店が軒を連ねる。フロアは現代風でありながら、どこか昭和感を漂わせている点が横丁らしい。
ジュウジュウと音を立てるミディアムレアのステーキは、やわらかな歯ごたえと肉の素材の良さを生かしたシンプルな味付けだ。そのため、肉そのもののうまみを丸ごと味わうことができ、白飯もどんどん進む。ライスはお代わり自由なので、コスパの点でも1200円を支払う価値は十分にある。
旨ダレが染み込んだラム肉を自分で焼いて食す
次に入ったのは、あみ焼きジンギスカンの「悟大」(ごだい)。東京・水道橋に本店があり、ジンギスカンの本場・北海道の千歳市にある老舗精肉店「肉の山本」から取り寄せている新鮮なラム肉を客自身が網で焼いて味わうスタイルだ。
ビール箱をテーブルの土台にするなど、店内にはいかにも横丁らしい雰囲気が漂っている。注文したのは、一番人気というラムロース定食(750円)。定食にはライス、小鉢、キムチ、スープが付き、ライスの大盛りとスープのお代わりは無料だ。
ピリ辛の旨ダレに漬け込み、しっかりと味を染み込ませたラム肉は、一切れがやや小さめなのが残念。ただし、量が少ないと感じたら、プラス150円で150g、プラス300円で200gに変更できる。
ラム肉は、網で焼くことによって肉汁が閉じ込められ、思った以上にジューシーだった。焼くことで余計な脂が落とされ、その落ちた脂による煙で肉がいぶされて香ばしいのも高ポイントだ。印象としては、量が少ないとはいえ750円なら十分に満足できる。
ちなみに、このときはランチタイムで客は少なめだったが、夕方以降に再度訪れてみると、仕事帰りの会社員たちで大賑わいだった。
味とコスパを総合的に判断して「大満足」とまではいかないが、横丁ならではの雰囲気を楽しみたい人にはうってつけといえる。肉をゆっくり味わいたいなら昼、はしご酒や出会いを楽しみたいなら、やはり夜に行くことをおすすめしたい。
(文=福田晃広/清談社)