昨年4月にグランドオープンした複合商業施設「GINZA SIX」は、森ビルが開発を主導したことからも、オープン当初から話題をさらった。今でも銀座は東京の再開発激戦区中の激戦区。不動産事業者や都市開発事業者は惜しみなく新しいリソースを投入し、虎視眈々と覇権を狙い合うエリアでもある。
森ビルが「GINZA SIX」で銀座進出を果たした際、ライバルの不動産事業者や都市開発事業者は警戒感をあらわにする一方で、関係者の一部からは「話題が続いているうちはいいが、そのうち客足は途絶えるだろう」と見る向きもあった。それほど、銀座におけるメインプレイヤーの政権交代は激しい。森ビルといえども、気を抜けないのだ。
銀座の覇権を狙うプレイヤーが多々いるなかで、話題性こそ森ビルに隠れているものの、着実に存在感を増しているのが関西を地盤にする鉄道会社の阪急電鉄だ。
阪急は有楽町・銀座駅前などで百貨店を経営してきた。それでも、関西が地盤なだけに一般的な知名度は決して高くない。鉄道ファンには知られた存在の阪急だが、なぜ東京で存在感が増しているのか。
「東京ミッドタウン日比谷」
それを解くカギが、2018年3月にオープンする「東京ミッドタウン日比谷」だ。銀座からも近く、霞が関官庁街から徒歩圏。都心とは思えない緑豊かな日比谷公園に面した一画に建設された。
銀座の上質な客を取り込もうとする一方で、霞が関で働く人々も取り込むといった戦略が想定されているが、なによりも「東京ミッドタウン日比谷」の特徴は“日比谷”という劇場街の復権を意図したところにある。
明治期、中央官庁は霞が関一帯に集積しておらず、築地や大手町などに散在していた。一方、明治後期には帝国劇場が開場するなど、日比谷は一足早く劇場街としてスタートを切った。日比谷が、自他ともに認める本格的な劇場街化を遂げるのは昭和9年。関西を地盤にしていた宝塚歌劇団が東京宝塚(現・東宝)を設立、東京宝塚劇場を開場したからだ。
いまや世界のタカラヅカとも形容される宝塚歌劇団は、阪急が創設。現在でも宝塚歌劇団は阪急の子会社・系列会社にはなっておらず、あくまでも鉄道会社の一部門という位置づけにある。そのタカラヅカにより、阪急は東京進出を果たした。そして、着実に東京で確固たる地盤を築いている。