ダサい・汚い・危険と言われ続けてきた東京都足立区。今般、行政が足立区のイメージアップに力を入れてきた成果も出始めて、足立区の人気は高まりつつある。特に、その人気を牽引しているのは交通の要衝となっている北千住エリアだ。
従来、北千住は手頃な賃料でマンションが借りられることがメリットとなり、最近は若者やニューファミリー世帯からの人気が高まりつつある。北千住ブームを陰で支えたのは、足立区が取り組む大学誘致政策だ。それまで、足立区には放送大学のサテライトスペースしかなかった。その背景には、高度経済成長期に制定された工場等制限法がある。同法により、東京23区内などでは原則的に大学を新設できなかった。
しかし、工場等制限法が撤廃されると、大学の都心回帰が顕著になる。足立区は早急に大学誘致に取り組み、東京藝術大学の誘致に成功した。以降、東京未来大学、帝京科学大学、東京電機大学がキャンパスを設置。北千住は大学生が闊歩する学生街の様相を呈するようになった。
大学生が増えたことで北千住界隈は活気にあふれることになったが、北千住の泣き所は古臭い町割にある。江戸時代から旧街道筋にあたる北千住は、いまだ宿場町の名残があり、明治期の面影を引きずっている。そのため、道幅も狭く区画も小さい。そうした地形的なこともあって、大資本による大型開発は難しかった。
そこにきて、このほど大手デベロッパーの三菱地所が北千住駅の西口エリアを大規模再開発することを表明。同エリアは木密と呼ばれる、小さな木造家屋が密集していたエリアだった。木密が解消されれば火事や震災といった防災面でも大きなメリットがある。また、それだけではなく、三菱地所という大資本が開発計画を主導することは否が上にも、北千住のさらなる発展が期待される。足立区の職員は、こう話す。
「三菱地所は、北千住から至近の千住大橋駅でも再開発を手掛けています。それだけに、足立区としても再開発における最良のパートナーだと思っています。こうした期待は、行政だけではありません。既存の住民も大型開発によって新住民が増え、町が活性化することに大きな期待を寄せています」
三菱地所は、東京駅前の丸の内一帯開発でも実績を有している。また、三菱グループの一翼を担う企業だけに、三菱地所が開発する街区には三菱の子会社や孫会社、関連企業・取引先などが集まることも想定される。三菱地所によって、北千住界隈はビジネス街としても発展する可能性を秘めているのだ。