飲食店や食品工場で働くと、作業開始前に確実に手洗いをしなくてはなりません。手洗いは、洗剤をつけてから最低30秒以上泡立てて行うように教育されます。また、手を洗う前に爪を短く切っておくことも必要です。
こういった“最低限”の衛生的なルールを、食品関係者は守らなければなりません。
みなさんが働いたことのある厨房などの現場では、タイムカードをいつ、打刻していましたか。手洗いは、打刻したあとに行っていましたか。
最近のタイムレコーダーには指紋認証のタイプもありますが、紙やカード式など、いずれのタイプでも、手洗い後に触れるべきではありません。
いつからが業務か
大きな食品工場で考えてみます。
自家用車で出勤して、駐車場に車を止め、従業員入り口まで歩き、更衣室で着替え、毛髪混入防止のためのローラー掛けを1分ほど行い、エアーシャワーを通過して、手を洗い、作業を開始します。
朝礼を行っている事業所も多いと思います。
「朝礼は、作業現場で8時50分から行います。始業は9時からで、タイムカードは8時45分以降に打刻してください。残業は15分刻みで計算します」
このような指示を受けたときに、何かおかしいとあなたは感じますか。タイムカードを打刻したときの残業時間計算は、1分単位で行うことが基本です。作業者が多いときに、タイムカードに行列ができてしまい、10分程度の刻み時間がないと対応できないという状況も考えられますが、打刻機などの設備を増やすなどの工夫で対応すべきです。ICチップを使用したカード等を使用すれば打刻が容易になり、打刻機前に行列ができることはなくなります。
また、朝礼はもちろん就業時間内に行うべきです。指示、報告、教育の場であり、就業時間内に行わなければなりません。一昔前に流行ったQCサークル(同じ職場内で品質管理活動を自発的に小グループで行う)活動なども、就業時間内に行うべきです。ちなみに、歓送迎会や趣味の活動は、全員強制参加でなければ就業時間外になります。
では、タイムカードへの打刻はどこで行うべきでしょうか。
本来は、駐車場で車から降りた時から業務が始まっていると、筆者は考えています。駐車場が広い事業所では、建物から遠い所と近い所に止めた時には、物理的に打刻するまでの時間に不公正が発生してしまいます。一番遠い所に止めた場合でも、タイムカードを打刻するまでの時間を事前にプラスしてタイムカードを計算できるようにすると不公平感がなくなります。
長時間労働が問題になっていますが、毎日の細かい管理から配慮されているか、確認が必要です。疑問に思ったことがあれば、ぜひ管理者に質問をしてみてください。
(文=河岸宏和/食品安全教育研究所代表)