働き方改革で今起きている現実…課長&部長は残業増加、若手は仕事放って帰宅→成長鈍化
安倍政権のもと、昨年から進められている「働き方改革」。約1年がたとうとしていますが、うまくいった会社では、実際に社員の働き方はどうなっているのでしょうか。
私は産業医として都内に20数社クライアントを持ち、2017年も1000人以上の働く人たちとの面談を行ってきました。人事担当者からの相談も、たくさん受けてきました。実際に働き方改革を真剣に推進している会社では、新たな課題が出てきました。今回は数社で生じた3つの働き方改革による課題をご紹介させていただきます。
まずひとつめは、時間管理の対象となる若手社員たちの残業時間は減りましたが、それをカバーするために管理職社員(課長部長クラス)の残業時間は増えてしまったということです。私の経験した働き方改革の多くは、労働(残業)時間の短縮でした。どうなったら働き方改革が成し得たと評価するのかというような議論は、ほとんどの会社ではありませんでした。その結果、働き方改革の第一歩目は、三六協定の対象となる社員たちの労働時間を減らす=若手の残業時間を増やさずに減らすことへ、多くの会社は向かっていました。若手から減らした労働時間分の仕事を誰がやるのかを考えれば当然の結果です。
反対に、こうならなかった会社においては、実際に若手の労働時間を減らすために、一部業務を外注に出したり、クライアントに今後は提供できる契約外でのサービス内容が減ることなどの了解をとったりしていました。
中間管理職は上にも下にも挟まれ、ストレスが多い役職だといわれています。この人たちに、さらに労働時間という負荷がかかるかたちとなってしまった働き方改革。産業医としては、この先が心配でなりません。
2つめは、やる気のある若手社員がスポイルされているということです。
仕事を学び自己成長を感じている社員は、「やりがい」を感じています。これは特に入社数年以内の若い社員に多く見られます。中堅どころの社員でも、周囲からの評価を感じ「やりがい」としている人たちもします。
やりがいがあり、やる気のあるときに、ハードに学び、自己成長につなげる。現在、それなりのポジションで活躍している中堅以上の方々は、おそらく皆経験してきたことだと思います。読者のあなたも、若い頃のハードワークが今の自分(の基礎)をつくったと感じることがあるのではないでしょうか。
残業をすることを全面的に肯定するわけではありませんが、やりがいを感じている社員は、若手でもベテランでも働いても比較的疲労が溜まりにくいといわれています。それなのに一律な残業時間制限は、このような社員たちをスポイルしてしまっていると感じました。
また、この“鉄は熱いうちに打て”ができない日本独自の状況は、グローバル企業においては、日本の社員たちの実力に、他の国の同期との差がついてしまう結果となりかねず、先々の日本のビジネス力低下にもつながると感じたというのは、大げさでしょうか。