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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

国の借金、GDPの3倍へ…内閣府、楽観的な高成長率を前提に試算か:妥当性を検証

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
 国の借金、GDPの3倍へ…内閣府、楽観的な高成長率を前提に試算か:妥当性を検証の画像1安倍晋三首相(写真:AP/アフロ)

 今年(2018年)は、2016年度から2018年度の3年間で進めてきた財政再建計画の中間評価を行う年であり、2019年10月に予定する消費税率引き上げの最終判断のほか、国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB:プライマリーバランス)黒字化の達成時期といった新たな財政再建目標を策定する年でもある。

 では、2018年度での評価はどうか。もともとの計画では、国と地方合計のPBの赤字幅を2018年度に対GDP比で1%程度に圧縮することを目指していたが、実際のところ、同年度のPBは2.9%の赤字となってしまった。同年度の名目GDPは約564兆円のため、金額ベースでは約10.8兆円の悪化で、この内訳は税収の下振れが4.3兆円、消費税率引き上げ延期の影響が4.1兆円、補正予算の影響が2.5兆円である。

 このほか、歳出の効率化努力で3.9兆円のPB赤字を削減しており、もし歳出削減がなかった場合は14.7兆円(=10.8兆円+3.9兆円)もPBは悪化していたことを示唆する。つまり、経済成長に頼った財政再建は難しく、財政再建のためには歳出削減と増税を含む税収の確保をしっかりと行っていく必要がある。

 この点で、先般(2018年1月23日)、内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」(以下「中長期試算」という)に基づき、新たな財政再建目標を設定すると、その判断を誤ってしまう可能性がある。

 というのは、中長期試算では高成長の「成長実現ケース」と低成長の「ベースラインケース」の2つのシナリオがあるが、今回の試算では、どちらのシナリオでも2018年度から2027年度にかけて、国・地方の公債等残高(対GDP)が縮小する試算結果となっているからである。

公債等残高(対GDP)、深刻な将来予想

 では、2028年度以降の公債等残高(対GDP)はどう推移するか。この姿については、名目長期金利と名目GDP成長率などに関する一定の前提を置けば、簡単に試算できる。なぜならば、

・T年度の公債等残高(対GDP)
= -T年度の国と地方合計のPB(対GDP)
    +(名目長期金利-名目GDP成長率)×(T-1)年度の公債等残高(対GDP)

という関係が成立するためである。2028年度以降における「名目長期金利-名目GDP成長率」の値や、国と地方合計のPB(対GDP)を設定すれば、簡単に計算できる。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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Twitter:@DeficitGamble

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