何かのトラブルに遭遇すると、相手に「訴えますよ!」などという常套句を投げつけることがあります。しかし、実際に民事裁判を起こす人は、あまりいないのが実際のところです。訴訟を起こすのは、弁護士費用や労力がかかりすぎるからです。
ところで、一般の人は、裁判になれば謹厳実直な裁判官が丁寧に争いの内容を吟味してくれ、公正かつ正義の判断を下してくれるものだと思いがちです。しかし、後述するように民事訴訟はトンデモない実態に満ち満ちています。ちなみに筆者は4月に出版された拙著『衝撃の真実100』(ワニブックス刊)で、こうした世の中の人々が抱く善意の幻想について、人間、お金、心理、生物、近未来といった分野ごとにその実態を暴いておりますので、ご興味があればご一読いただければ幸いです。
さて、民事訴訟の実態ですが、日本の現状は悲惨な状況に陥っています。そうなる理由は、大都市の裁判官は、1人当たり常時70~90もの事件を抱えているからです。そして、勤務評定はどんな内容の判決文を書いたかではなく、月間の処理件数によって行われます。ひと月で何件終わらせたかが問われるわけで、いちいち訴状を読み込むのに時間をかけているヒマはなく、時間のかかる判決文など書きたくない。そして判決文を書けば判例として記録され、控訴審でひっくり返されれば査定にも響きます。
そのため、第1回の期日から裁判官は原告と被告の双方を別々の部屋に呼び、「和解金はこれぐらいの金額でどうですか」などと双方に「和解」を迫ってくることもあります。双方が渋々納得して「和解」に応じれば、裁判官は面倒な判決文を書かずに済みます。公正な判決を望んで訴訟に訴えても、弁護士を儲けさせるだけになることもあります。弁護士のなかにも、面倒な裁判は続けたくないので、裁判官の肩を持ち「和解したほうがオトクだよ」とプレッシャーをかけてくる人もいます。
公証人
このほかにも、日本の法曹界の問題を見てみましょう。
定年で退職した検事や裁判官のなかから、法務大臣が「公証人」を任命する制度があります。検事や裁判官が定年退職して弁護士になったところで、ろくに稼げません。しかし、大都市で公証人になれば、その気になれば年収3000万円は固いです。70歳の定年まで勤めれば、億単位の収入を得ることができます。