6年前、当時大阪市長だった橋下徹氏のもとで行われた市の職員を対象にしたアンケート調査が、不当労働行為とされた。だが、橋下氏が決定に従わず「市の公務員は何百人もクビですよ」などと発言したとして、大阪弁護士会が懲戒処分を検討する方針を決めたと、NHKが1月2日に報じた。
これに対して橋下氏自身は、1月10日付プレジデントオンライン連載記事「橋下徹 通信」の『ふざけるな弁護士会』で反論している。この件に関しては、橋下氏本人以外からも大阪弁護士会に対して疑問の声が上がっている。「6年前の発言をなぜ今?」「政治家としての発言で、なぜ弁護士としての懲戒を受けるのか?」というものだ。弁護士資格を持つ国会議員も多いが、問題発言をして弁護士として懲戒処分を受けたという例は、与野党を問わず聞いたことがない。
弁護士会とはなんなのか? 懲戒処分というのは、どのように行われるのか?
ある法律事務所に所属する弁護士に、業界の闇の部分も含めて話を聞いた。
生殺与奪権を握る弁護士会
まず、弁護士会とはいかなるものなのか。
「世の中のさまざまな業種において、監督官庁というものがあります。不動産業や建設業であれば国土交通省、ホテルや旅館であれば保健所や厚生労働省、携帯電話などの通信系であれば経済産業省、病院であれば厚労省などとなっています。しかし、弁護士業には監督官庁がない。政府が監督しないという方針をとっているんです。
戦前は弁護士の監督官庁は司法省、今でいうところの法務省でした。司法省が監督官庁として、弁護士を選任したり、弁護士に懲戒を行ったり、弁護士身分の剥奪をしたりしてたんです。戦後になって、マッカーサーが欧米流の弁護士スタイルをつくって、弁護士会という自治組織ができました。東京弁護士会とか千葉県弁護士会、神奈川県弁護士会など、各都道府県にある単位弁護士会を束ねているのが、日本弁護士連合会です。司法試験に受かっただけでは、弁護士になれません。弁護士会に所属しないと、弁護士はできないんです。そうすると所属させるさせないも弁護士会の判断だし、懲戒するしないも弁護士会の判断。言うなれば、生殺与奪の権利を握っているんですよ」