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日本の「ヤクルトレディ」が海外から注目を集めた理由とは? 未来を創造する企業の条件

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日本の「ヤクルトレディ」が海外から注目を集めた理由とは? 未来を創造する企業の条件の画像1※画像:『未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ』(リンダ・グラットン著、吉田晋治訳、プレジデント社刊)

 これからの企業は、自社の利益を追求するだけでなく、社会全体の問題を解決する担い手としての役割をよりいっそう求められるだろう。世界が高度に繋がり、影響し合う現代社会では、あらゆることが他人事、対岸の火事では済まされなくなっているからだ。

 そんな、これから先の企業に求められる姿を示唆する一冊が『未来企業 レジリエンスの経営とリーダーシップ』(リンダ・グラットン著、吉田晋治訳、プレジデント社刊)である。

 本書は、日本でもベストセラーになった『ワーク・シフト』の企業版に位置づけられる。本書では「レジリエンス」というキーワードを核に、企業や経営者、働く人々にもたらされる変化と可能性を示している。

 レジリエンスとは、「ストレスからの回復力、困難な状況への適応力、災害時の復元力」といった意味合いの言葉だ。少々捉えにくい概念だが、多様化、複雑化する不安定な現代社会の課題や問題を受け止め、逆境を乗り越えていく力と考えることもできるだろう。

 本書ではさまざまな企業を事例として挙げながら、「企業のレジリエンス」を、「社内のレジリエンス」「社外のレジリエンス」「社会全体のレジリエンス」という3つの領域から考察している。

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 「社内のレジリエンス」は、企業が持っている資産と能力、とりわけ人的資産が重要になる。

 従業員の日々の行動で、知性と智恵、精神的活力、社会的なつながりは増幅され、威力を発揮する。それは、組織の構造や取り組み、リーダーの在り方によって変化する。

 たとえば、化学会社デュポンで最も大きな収益を上げる特殊繊維の「ケブラー」が誕生した背景には、社員が好きに使える時間があった。同社の研究員や技術者の知性や知恵を制限しない制度が「社内のレジリエンス」を高め、企業の発展に貢献したのだ。

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 ここ数十年は、企業は「社内のレジリエンス」だけを考えていれば事足りた。しかし、事業展開地域やサプライチェーンのことを考えた企業活動が求められるようになってきたと著者は語る。

 そこで、企業は二つ目の「社外のレジリエンス」についても考えていく必要が出てきた。これは内側と外側を隔てる垣根を取り払い、企業がその一員である地域社会や広範なサプライチェーンにも目を向けていくということだ。

 著者は、その例として日本の「ヤクルトレディ」を取り挙げている。

 2012年のことだ。埼玉県で75歳の老女がなくなっているのが見つかった。傍らにいたのはやせ衰えた45歳の精神障害を抱えた息子。この地域を担当するヤクルトレディは、新聞が溜まっていることに気づき、異変を察知した。そのおかげで息子の命は救われたという。

 日本のみならず先進国においては近隣住民同士のコミュニケーションは希薄になっている。ヤクルトのビジネスモデルや理念は「社外のレジリエンス」を体現している一例だと言える。

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 企業は事業展開していない地域からも影響を受けている。そこで必要になってくるのが「社会全体のレジリエンス」という視座だ。

 急激な環境変化、格差の拡大、貧困などの深刻な問題は、今、事業展開している地域では表面化していなくても、将来的に企業の発展や従業員の妨げになる可能性がある。グローバル企業は、大きな影響力と実践力を備えており、こうした諸問題に立ち向かうための独自の役目を担える。

 子どもの権利の保護のために活動しているNGO「セーブ・ザ・チルドレン」は、世界的コンサルティング会社である、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)との協力体制を築いている。

 同事務局長は「BDGの洞察力、プロセスのエンジニアリングや変革マネジメントは、子どもたちの生活を向上させる取り組みを前進させる支えになっている」と語る。 このような「社会全体のレジリエンス」を高める取り組みを担う企業は増えつつあるようだ。

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 本書で紹介される数々の企業事例は、最終的に社会全体という枠組みに考察が進んでいくが、その中には自社やチームが発展するヒントも得られるはずだ。また、誰しも、社会の中に生きている個人なのだから、一人一人が未来について考えるためには有益な一冊だと言えるだろう。
(ライター/大村佑介)

※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。

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