ついに「Uber Eats(ウーバーイーツ)」に司直の手が伸びた――。
警視庁は22日、入管難民法違反(不法就労助長)の疑いで、ウーバーイーツを運営していたUber Japan(ウーバージャパン)の当時の代表ら2人と、法人としての同社を書類送検した。不法残留していた外国籍の人物が配達員として就労するのを助長した疑いがあるという。
以前からウーバーイーツをめぐっては、在留資格のない外国人が不正に入手したアカウントを使用するなどして配達員として働く事例が問題視されていた。特にコロナ禍で職を失った外国人が数多くウーバーイーツの配達員に流れ込んでいるとも指摘されている。
「コロナ対策としてウーバーは、外国人もネットでパスポートや在留カードの写真データを送るだけで配達員として登録できるようにしていたため、違法に働く外国人が増えていた。現在では東京や大阪などの都市部では対面での登録手続きに切り替えられているが、違法な就労ケースの件数の高止まりに当局も危機感を抱いたのではないか。
加えて、ウーバーイーツでは利用者の爆発的な増加に伴い、配達員と歩行者や車両との接触事故が問題視されているなか、配達員はウーバーの社員ではなく、会社側が責任を持って配達員を管理しているわけではない。
当局としては、ウーバーイーツの配達員をめぐるさまざまな問題が広がり“無法状態”“脱法状態”が生まれつつあるとして、ここで一度、会社に対して“お灸を据えた”という意味合いもあると感じる」(外食チェーン役員)
現在のウーバーイーツがはらむ法的問題や、書類送検が今後の営業に影響を与える可能性などについて、山岸純法律事務所代表の山岸純弁護士は次のように解説する。
<今回、「配達員の在留期間が過ぎているのに、在留資格などを確認せずに仕事をさせた」ことを理由に、入管難民法違反を問われています。要するに、外国人を雇うときに「在留資格」を確認せずに働かせた、ということです。
ウーバーの配達員は、ろくに面接もせず、書類の確認もせずに、比較的誰でもすぐに始められるということは前々から言われていたところです。ウーバーの配達員の検挙件数(いわゆる労働ビザがない不法就労など)が増加する中、捜査機関も「ウーバー本部がそれを知らないわけないだろ」という“あたり”の下、捜査を進めたのでしょうね。
不法就労助長罪は3年以下の懲役や300万円以下の罰金などが科されるので、結構な重罪です。今後、わざと組織的に不法就労を見逃していたようなことが明らかになれば、それなりの刑罰が科されることでしょう>
当サイトは2020年1月12日付記事『ウーバーイーツ、“食品大量廃棄”が起きていた…配達員への一方的な報酬引き下げが原因』で問題点を指摘していたが、改めて再掲載する。
――以下、再掲載――
外食宅配事業を行うウーバーイーツの構造的な闇がまた明らかになりつつある。事のはじまりはウーバーイーツを日本で運営する「ウーバージャパン」が昨年11月、東京都内の配達員の基本報酬を引き下げたことだ。
それに伴い配達員は減少。残った配達員もより稼げる地域に移動した。一方で、ウーバー本部が加盟店を都心以外にも拡大させ続けていることもあって、受注飲食店と配達員との間のマッチングが成立せず、商品の大量廃棄が生じているというのだ。当サイトでは、複数の配達員やファーストフードチェーン店の関係者から証言を入手した。注文者、配達員、飲食店すべてに不利益となる現行の同社のシステムの実態を探った。
配達報酬の一方的な引き下げがトリガー
ウーバージャパンは11月29日、東京都内の配達員に対し、基本報酬を引き下げた。配達員の報酬は、配達距離報酬と荷物の受け取り料金などの「基本報酬」とウーバー本部が指定する特定の地域や時間に配達などをすることで得られる「ボーナス報酬」の2つで構成されている。今回の報酬引き下げにより、1キロ当たりの距離報酬は150円から60円に引き下げられたほか、受け取り報酬も約12%カットされた。
こうしたウーバージャパンの一方的な方針に対して、一部の配達員でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は事故や怪我の保障が充分なのかの調査依頼、一方的なアカウント停止に対しての協議、距離報酬の計算基準の説明などを求めて団体交渉を要求。会社側は「配達員はオランダに所在するウーバーポルティエBV社と契約をしており労働組合法上の労働者に該当しない」と拒否している。
忌避される「熟成案件」→廃棄へ
商品廃棄の問題は、こうしたウーバージャパンの不可解な労務管理の中で、新たに明らかになった。ウーバーの配達員は次のように現在の問題を指摘する。
「お客様から注文が入ったあと結果的に正式な配達パートナーが割り当てられず時間が経過してしまった配達案件のことを、配達員の間では『熟成案件』と言っています。
例えば注文のあったレストランの近くで配達員がいなくて、マッチングできなかったり、配達拒否やキャンセルでたらいまわしになったりして、出来上がりから約1時間経過したような商品の配達がそれにあたります。そうした商品はどんなに迅速に届けても、お客様から『遅い!』と批判され、BAD評価になってしまいます。そのため、配達員の間では忌避されています」
どうしてこのようなことが起きてしまうのか。それは「距離報酬」の引き下げが一つの原因になっているようだ。別の配達員は次のように話す。
「今回の報酬引き下げで配達員の数自体が減っています。実際に距離報酬の引き下げにより、遠距離配達は時間的にも割に合わないことになりました。つまり比較的に短距離で数多くの配達をすることで利益を上げるビジネスモデルに変わってしまったことが大きいと思います。
どんなにほかに競争相手がいなくても、マッチングできていない遠いお店に商品をピックアップしにいくのは、効率的にも、配達員の評価の観点からもリスクしかないのです。しかもお客様のBAD評価が何度も重なれば、我々の受注にも影響しますし、ウーバージャパンからアカウントを停止される可能性もあります。専業で働いている人間にとって、それは失業を意味します」
「廃棄しても損はないので受け続ける」
東京23区外にある大手ファーストフードチェーン店の店員は小声で次のように話す。
「ちょうどウーバーの報酬改定以降の12月上旬ごろから、配達員とのマッチングが成立しない事例が相次ぎました。クリスマスも近く注文が殺到していたのですが、ウーバー受け渡し窓口に商品が山積みになっていって、多い時には、10~20袋くらい廃棄になりました。繁忙期ということもあって、ウーバーさんの対応は直接来店するお客様に比べて後回しになりがちで、最終的に受け付けしなくなりました」
別のハンバーガーチェーン店の店員は次のように指摘する。
「ウーバーの注文は深夜が多いです。そんな時間に、ウーバーのリュックをしょって配達して回っている人なんて見たことないでしょう? 案の定、マッチングはしません。でも、店としてはウーバーから補填を受けられるし、基本的に損はしていないので受け続けています」
マッチングが成立せず、食品が廃棄された場合、飲食店と注文者にはウーバージャパンが注文料金を補填をする。
ウーバーイーツユニオンは一連の問題の事実を認めたうえで、次のように語る。
「一見誰も損をしていないようですが、お客は食べたい時に食べられない。熟成案件でもまじめに配達した配達員はBAD評価を付けられる。店も大量の食品ロスが生まれる。問題ばかりです。ビジネスモデルとしても、企業の社会的な責任からも大きな問題があると思います」
(文=編集部)
時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。