アライアンスという緩やかな連合体は、世界でも例を見ない稀有なモデルだ。1000万台時代を戦うためのO&M(オペレーション&マネジメント)として、ルノー・日産アライアンスは、その壮大なる実験に取り組んできたといえる。
壮大な実験は、ゴーン氏のカリスマ性、強力なリーダーシップなくして実行することはできない。
日産は2016年10月、三菱自動車を傘下におさめ、ルノー・日産・三菱自動車アライアンスが結成された。17年9月には、新中期計画「アライアンス2022」を発表し、アライアンスによる年間のシナジー効果を16年の50億ユーロから100億ユーロ以上に増やすとともに、アライアンス全体のグローバル総販売台数を17年の1060万台から1400万台に伸ばすと発表した。
「アライアンスの持つ規模のおかげで、各社は自動運転、電動化、コネクティッドカーに関わる一連の技術とサービスに投資しながらも、それ以外に必要な投資を犠牲にする必要はありません。つまり、切り詰めたり、死角を持つことはない。これにより、変化する市場のトレンドを察知し、活かすことができます」
ルノー・日産・三菱自動車アライアンス会長兼CEOを務めるゴーン氏はこう述べた。
また、18年3月には、シナジー創出の加速化を図るために機能統合を拡大することが発表された。新たにアライアンスに加わった三菱自動車は、すでに18年4月以降、購買、品質、トータルカスタマーサービス、事業開発のプロジェクトに加わっており、研究開発、生産、物流、アフターセールスでも段階的に連携を進めている。19年度からは、本格的に機能統合に加わる計画だ。
三菱自動車の持つ強みは、アライアンスを補完することは間違いない。アセアン地域の需要、そして、プラグインハイブリッドやピックアップトラックを中心とするセグメントが強化されるからだ。
“ゴーン革命”の集大成の行方
ところが、いよいよ3社連合によるシナジーが生み出されようとしている最中、フランス政府から横やりが入った。かりにも、ルノーと日産が経営統合されるようなことがあれば、三菱自動車を含めた緩やかな連合体は崩壊することになるだろう。日産としては、なんとかしてフランス政府がルノーへの発言権を強めるのを抑えたい。資本構成の変更案は、そうした経緯から出てきたといえる。
では、資本構成変更の具体策はあるのか。西川氏は、「資本構成の在り方は、いろいろなかたちがある」として明言を避けた。また、「自立性を持ちながら、いまと同じような環境をどうつくれるかだ」とも述べた。
アライアンスという“壮大な実験”はどうなるのか。できることならば、“ゴーン革命”の集大成である、緩やかな連合体がもたらす結果を、ぜひ、見せてほしいところだ。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)