ルノー・日産アライアンスは、“自動車産業最終戦争”を戦うための“壮大なる実験”である。ところが、三菱自動車を加え、いよいよ3社連合で本格的なシナジー効果を出そうという段になって、その体制の維持が危うくなっている。
ことの発端は、マクロン政権発足以降、ルノーの筆頭株主であるフランス政府が、日産とその親会社であるルノーとの経営統合を強く求めていることにある。表向きは、自動車業界の世界的な寡占化が進むなかで、3社の経営を一体化する必要があるためとされているが、本当のところは、日産を完全にルノーの支配下に入れて、日産のクルマをフランス国内で生産し、雇用を増やすことにあるといわれる。
5月14日に開かれた決算記者会見の席上、日産CEOの西川廣人氏は、「一番の宿題は、現経営陣から次のリーダー陣に変わっても、アライアンスを維持できる仕組みをつくることです。その検討のなかでは、資本構成の変更も含めて考えます」と説明した。また、日産とルノーが合併に向けて交渉しているとの一部報道については、「合併の話をしている事実はまったくありません」と、西川氏は強く否定した。
緩やかな連合体
そもそもの始まりは、2兆円の有利子負債を抱えて経営破綻寸前だった日産が1999年、ルノーの傘下に入り、現在、ルノー会長兼CEOのカルロス・ゴーン氏のもとで経営の立て直しを図ったことにさかのぼる。
その後、自動車業界は年間販売台数1000万台を超えたトヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)を、米ゼネラル・モーターズが追いかける構図となった。このとき、かりにもルノーと日産が経営統合すれば、3強と肩を並べる体制が整ったはずだが、ゴーン氏はその選択をとらなかった。
なぜか。独ダイムラー・クライスラーと三菱自動車、同ダイムラーと米クライスラー、VWとスズキなど、多くの提携が破綻したことを考えれば、ゴーン氏の選択は正しかったといえる。国も違えば、企業文化も違う2つの会社が一緒になっても、うまくいくはずがない。ゴーン氏は、2つの会社でありながら、一つの会社のごとくマネジメントをする“アライアンス”を選択した。いってみれば、緩やかな連合体である。
以後、ルノー・日産アライアンスは、それぞれの会社の自主性を尊重したうえで、研究開発、生産技術・物流、購買、人事の機能統合を進め、重複作業をなくすことでシナジーの創出を図ってきた。具体的には、共同購買、原価低減、共通プラットフォームの開発、生産工場の相互活用などだ。