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観光バスの倒産&休廃業が過去最多を更新…バスツアー激減で貸切バスは「実働率1ケタ」に

構成=長井雄一朗/ライター
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貸切バス

 コロナ禍で人流の抑制が求められる中、観光バス業界がかつてないほどの苦境に陥っている。帝国データバンクの調査によると、2020年度中に発生した観光バス運行事業者の倒産は14件となり、リーマン・ショック直後で旅行需要が大きく後退した09年度通年の10件を上回って過去最多となった。また、同年度の休廃業・解散も32件発生し、こちらも昨年を大きく上回って過去最多を更新している。

 観光バス業界の現状について、帝国データバンクデータソリューション企画部情報統括課副主任の飯島大介氏に話を聞いた。

観光・イベント・学校行事が全滅

――観光バス業界は厳しい経営状況が続いていますね。

飯島大介氏(以下、飯島) これまでは国内外、特に急増した中国からの旺盛な旅行需要を背景に、団体客および旅行会社を通じたバスツアー客の利用が増加するなど、好景気に沸いていました。昨夏に予定されていた東京五輪での旅客送迎需要も増加が見込まれたため、異業種からの参入も相次ぐなど活況を呈していたのです。

 しかし、昨年3月以降はコロナ禍で旅行需要そのものがほとんど消失し、バス旅行のキャンセルなどが相次いだほか、学校の部活動や修学旅行向けの需要も消失しました。「Go To トラベル」で一旦は客足が戻りかけたものの、感染再拡大や再度の緊急事態宣言発出などで、総じて貸切バス需要は低迷が続いています。「観光旅行の激減により見通しが立たない」といった声も事業者から上がっており、バス会社によっては事業の存続そのものが危うい状況です。

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――具体的な業績はどうなっていますか。

飯島 観光バス事業者の業績を調査した結果、通期予想を含めた20年度業績が判明した約300社のうち、9割超で前年度から売り上げ減少となることが判明しました。また、減収となった企業のうち利益動向が判明した約150社を見ると、約6割が最終損益で赤字、3割が前年度から減益となる見込みで、利益面で影響を受けた企業が9割に迫っています。すでに9割超の観光バス事業者が活用しているとされる雇用調整助成金をはじめ、各種資金繰り支援はあるものの、売り上げの減少幅が大きいため損失の穴埋めには至らず、収益面では依然として苦しいのが実情です。

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――観光やイベントにからめたバスツアーは、催行自体ができない状況が続きました。

飯島 収益性が高い独自のバスツアーを企画できず、20年度は観光ツアー収入がほぼゼロとなる事業者が相次ぎました。また、東京五輪をはじめとしたスポーツ大会やコンサートなどの大規模イベント、学校の部活動や修学旅行などが中止や延期となり、チャーターバスの需要が消失しました。

 国土交通省の調査によると、緊急事態宣言が発出された昨年4月以降、貸切バスの実働率は前年に比べて大幅に低下。5月には5%に落ち込み、6月以降も10%台で推移しています。各社とも保有するバスのほとんどが稼働せず休車状態となるなど、開店休業状態が続きました。

――大手の動向はいかがですか。

飯島 バスツアー大手のはとバスは、旅行需要の減少を受けて、遊休バスを使用したアドベンチャー企画も行うなど、非貸切バスの需要喚起を模索していました。

 また、他社ではバスガイドがツアーの様子をYouTubeなど動画サイトで生配信する観光ツアーを開催するなど、バス運行以外の需要を狙う動きも急速に広まり、ネット上を中心に反響を得ています。お客さんを乗せられない状況下であっても、バーチャルなどの活用でバスという経営資源を活かす取り組みが広まり、需要を掘り起こす動きが進んでいます。

 また、コロナ禍が収束すれば、これまでの反動で旅行の需要が高まると予想されているため、各社は従業員教育やバスの整備を集中的に行うなど反転攻勢の準備も進めています。

――今後の見通しについて教えてください。

飯島 楽観的なシナリオとしては、コロナワクチンの接種が進み、観光需要の喚起、たとえばGo To トラベルや学校の行事などが再開すれば、貸切バス事業にとっても大きな追い風になるでしょう。これまで我慢を強いられてきた個人旅行なども、高齢者層を中心にその反動から大きな特需の発生が予想され、これまでの需要急減トレンドから大きな転換が起きる、というものです。

 一方、悲観的なシナリオとしては、ワクチン接種が進んでも人の移動がコロナ前の水準に戻らず、観光需要の低迷が続いたまま、観光バスの需要も数年単位で回復しないという状況が考えられます。多くのバス事業者は、現在でも座席などの消毒に加え、座席間隔を空けるなど感染防止対策を徹底しており、きちんと換気と対策を行えば感染リスクは低いとするデータもあります。ただ、「貸切バスは3密になりやすい」というイメージが消費者の中で根強く、しばらくは利用が敬遠される可能性があります。また、乗客数を抑えた運行は採算性の低下にも直結するため、やはり経営の圧迫につながります。

 観光バス業界ではどちらのシナリオも囁かれていますが、コロナワクチンの接種とその後の観光需要の回復に、観光バス業界の命運がかかっていると言っても過言ではないでしょう。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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