出光興産は6月28日、東京・港区のグランドハイアット東京で株主総会を開いた。昭和シェル石油との合併計画を主導する月岡隆会長ら経営陣の取締役選任議案など4議案すべてを賛成多数で可決した。
月岡隆会長の取締役選任議案への賛成率は96.1%だった。昨年の61.1%から35ポイント上昇した。昭和シェルとの経営統合に反対してきた大株主の出光家の大半が今回は議決権を行使しなかったため、結果的に賛成比率が高まった。全体の議決権のうち行使されたのは約6割。議決権の行使を見送った創業家の株主がいたということになる。
昨年6月の株主総会で出光創業家は、取締役12人の選任議案のうち5人に反対票を投じた。月岡氏(当時社長)、関大輔氏(当時副社長)、丹生谷晋氏(常務)、本間潔氏(取締役)の賛成率はいずれも61.1%。社外取締役の東京理科大学大学院イノベーション研究科教授の橘川武郎氏も61.3%だった。
出光と昭和シェルは2015年11月、合併することで基本合意したものの、16年6月の総会で創業家が「企業文化の違い」などを理由に反対を表明。直後の月岡社長の賛成率は52.3%と前年の91.6%から急低下した。
その後、経営陣と創業家との対立は先鋭化した。経営側は創業家との和解を目指すため、月岡氏が社長から会長に退き、関氏が副社長を退任した。
18年4月1日付で副社長の木藤俊一氏が社長に昇格した。木藤氏は17年6月の総会で、創業家が反対した5人の取締役のリストに入っていなかったことから、98.2%の賛成率を得た。そして、今年も月岡会長と同じ96.1%を得て選任された。
今年に入ってから経営陣と創業家は歩み寄りをみせていた。出光株を最近取得した、旧村上ファンド代表で投資家の村上世彰氏が、経営陣と出光創業家の間に入り、創業家に助言をしてきた。
出光興産と昭和シェルは株主総会後の7月10日、19年4月に経営統合すると発表した。出光の経営側が譲歩し、創業家と合意書を締結したことで3年近く続いた混迷に終止符が打たれた。