3月期決算企業の株主総会では、大株主の国内機関投資家の態度が変わった。これまでは経営側の議案を黙認してきたが、内部の基準に合わなければ反対票を投じ、議案ごとに賛否を明らかにする方針だ。
6月の株主総会では、株主が議案を提出する「株主議案」をした事例が42社に上った。背景には、金融庁などが機関投資家に求められる規範として2014年に示した「スチュワードシップ・コード」がある。これにより、企業には社外取締役の導入といった体制準備を、機関投資家には企業との対話を促す指針ができた。日本の企業には「株式の持ち合い」など独特の慣行があるが、これを国際標準に近づけたいとの思いがある。
そこで、各社が株主総会後に東京証券取引所に提出した臨時報告書に基づき、株主総会議案の賛成率を調査した。
素材メーカーを中心に、データ改ざんや検査不正などの問題が相次いで発覚し、日本企業のモノづくりへの信頼は大きく傷ついた。
自動車の無資格検査が発覚した日産自動車は6月26日に開いた株主総会で、2人の取締役選任など3議案を可決した。女性レーシングドライバーの井原慶子氏と、元経済産業審議官の豊田正和氏を社外取締役に選任する議案に対する賛成率は、ともに99%を超えた。ちなみに、カルロス・ゴーン会長などほかの取締役は、改選の年ではなかった。
株主総会では、昨年9月に発覚した無資格検査問題について、株主からの批判が相次いだ。西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)は、問題の責任をとって役員報酬の一部を返納した。株主総会では、返納後の17年度の報酬が前年比26%増の4億9900万円だったことを明らかにした。
ゴーン氏の報酬は7億3500万円で、前年より33%減った。4年ぶりに10億円を下回った。トヨタ自動車で役員報酬がもっとも高かったのは、販売を担当するディディエ・ルロワ副社長の10億2600万円。ゴーン氏は自動車業界トップの高給取りの座を明け渡した。
しかし、日本にほとんどいない勤務実態に照らし、「実質的にはゴーン氏がトップ」(自動車担当のアナリスト)といった辛口の評価もある。トヨタの豊田章男社長は3億8000万円だった。