これ以外にも、理由はいくつか考えられる。「他の来店客や近隣住民への配慮」も、そのひとつだろう。
生ビールの販売は「ちょい飲み」を求める人を取り込む狙いがあるが、「ちょい飲み」を通り越し何杯も購入して店内のイートインや店の駐車場などで本格的に飲む人が出てこないとも限らない。騒いだり、強烈なアルコールのにおいを放つ人も現れるだろう。それを嫌う他の来店客や近隣住民に配慮したとも考えられる。
テスト販売は、生ビール購入客以外の来店客や近隣住民の反応を知るためでもあったわけだが、それを実現する前に中止となったのだから、相当に難しい問題をはらんでいたといえる。
ニューデイズが便乗商法展開?
セブンの生ビールの販売は中止に追い込まれてしまったが、その一方でコンビニエンスストア「NewDays(ニューデイズ)」に対し、にわかに注目度が高まっているというのも興味深い。
ニューデイズは東日本旅客鉄道(JR東日本)のグループ会社JR東日本リテールネットが、鉄道駅を中心に全国に約500店を展開しているが、そのうちの46店で生ビールを販売している(7月20日時点)。
販売しているのは「アサヒ スーパードライ樽生ビール」(545ミリリットル)で、価格は398円。レジで代金を支払った後にもらう専用カップをビールサーバーにセットし、ボタンを押すとビールが注がれるというもので、イートインなどで飲むことができる。
JR東日本リテールネットは、セブンの生ビール販売中止が騒がれている最中の7月18日に、同社ホームページで「お知らせ」として「NewDaysの一部店舗では、2016年5月より『樽生ビール』を販売しております。是非、仕事帰りや旅行の際に至福の一杯をお楽しみください」と記載した文書を公表した。セブンの騒動に便乗した対応と考えられる。
樽生ビールを販売する店舗は、いずれも駅構内か駅近くにあり専用の駐車場もないため、飲酒運転を助長するという指摘をされることはほぼないだろう。また、駅利用のついでに飲む「ちょい飲み」需要が大半のため、他の来店客や近隣住民への悪影響は限定的だ。電車を利用する人の利用が多いニューデイズならではといえるだろう。セブンの騒動を機に、販売を拡大したいところだ。
セブンの騒動では、コンビニでの生ビール販売の難しさが改めて浮き彫りとなったわけだが、ニューデイズの今後の動向次第では近い将来、コンビニでの生ビールの販売議論が再度沸き起こるかもしれない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。