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スルガ銀行、現場行員が融資書類偽造を主導も…業者からキャバクラ接待や現金受領か

文=有森隆/ジャーナリスト
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スルガ銀行、現場行員が融資書類偽造を主導も…業者からキャバクラ接待や現金受領かの画像1スルガ銀行(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 スルガ銀行(有國三知男代表取締役社長)は9月7日、「第三者委員会の調査報告書の受領と今後の当社の対応について」と題するニュースリリースを出した。

<第三者委員会の調査結果において、今回の一連のシェアハウス等関連融資および一棟収益物件を対象とした資産形成ローンで、審査書類等に多くの改ざんや偽造が行われ、相当数の当社社員がそれに関与し、また、積極的に関与しないまでも偽造の事実を認識あるいは疑いながら融資手続きを行っていたことが認定されました。また、上記関連融資・ローン実行時におけるお客様のご意向に沿わないフリーローン契約等のセット販売が行われていたことも認定されました。その原因としては、過大な業績目標の設定とその達成のための過度のプレッシャー、審査の独立性の欠如、コンプライアンス意識の欠如、さらには当社のガバナンスの不全が指摘され、究極的には企業風土そのものの問題であるとのご指摘をいただいております>

<当社といたしましては、報告書の指摘を真摯に受け止め、企業文化を抜本的に改革・転換し、コンプライアンス意識の徹底およびお客様本位の業務運営態勢の構築に努め、また、ガバナンス機能が有効に発揮できるような態勢整備を行ってまいります>

【証言1】

 組織的な不正に関与していたのは執行役員1人や、支店長を含む行員80人である。改竄を行員が黙認しただけでなく、一部の行員は不動産業者に書類の偽造を依頼するなど不正を主導した。有國三知男・新社長は「不衛生な企業文化、労働環境が今回につながった。まず環境を正常化させる」と述べた。

【証言2】

 複数の行員が融資の見返りに(シェアハウスの)販売会社からキャバクラなどの飲食接待を受けていた。現金のキックバックを受けていた行員も存在するようだが、自己申告した行員や退職した行員はゼロである。

経営幹部は特別背任罪に抵触の可能性も

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<今後の態勢について

今回の一連の事案の経営責任を取り、代表取締役会長 岡野光喜、代表取締役社長 米山明広、代表取締役専務 白井稔彦、専務取締役 望月和也、常務取締役 柳沢昇昭が辞任いたしました。そして、新たな経営体制として、本日開催の取締役会において取締役有國三知男を新しい代表取締役社長に選任いたしました。

今後は2018年6月設置の社外取締役、社外監査役を中心とした「企業文化・ガバナンス改革委員会」(委員長:木下潮音社外取締役)の活動をさらに強化し、事実上の指名委員会および報酬委員会としての機能を果たすことで、委員会設置会社に近い形態での業務運営を行ってまいります。さらに今後の当社経営の安定および信頼回復を図るため、社外より佐々木弘氏を上席執行役員 業務改革担当として招聘する(9月10日付)とともに、新たに7名の執行役員を当社内から選任いたしました>

【証言3】

 金融庁は当初、大物の経営者を招く構想だったといわれるが、引き受け手がなかった。引き受けても、いつまで経営に積極的に関与できるかわからないのだから。佐々木弘氏は旧日本長期信用銀行出身。ニューヨーク支店次長や米州部長、国際業務部長を歴任。長銀が新生銀行になってからは新生銀行金融開発部長、新生証券の社長を務めた。東大法学部卒。この人事も金融庁のお墨付きなのだろう。

【証言4】

 創業家(岡野家)はスルガ銀行の株式を15%以上保有している大株主。今後、岡野氏が経営に影響を及ぼす可能性について、有國新社長は記者会見で「それは会長が考えることだ」と言葉を濁した。妥協の産物の有國社長で大丈夫なのだろうか。2019年3月期決算までの短期政権との見方も台頭している。

【証言5】

 不正融資が立件されれば、背任罪になる。経営幹部の関与が立証されれば特別背任罪に問われる。シェアハウスなどの販売会社が物件の販売価格を市場価格よりも割高に認定し、それをスルガ銀の複数の行員が把握した上で融資したケースも多い。販売会社の営業担当者と行員が結託して不当に高い不動産を買わせていたとすると、詐欺罪に抵触する恐れがある。創業家の関連企業の500億円規模の融資の妥当性も焦点となる。この場合は特別背任だ。暴走融資をトップが放置(容認)していたことの法的責任も問われよう。

 ニュースリリースでは「経営責任の追及及び不正に関与した従業員の処分について」として次のように言及している。

<今回の一連の事案の責任を明確にするため、本年6月の定時株主総会において新たに選任された社外監査役である行方洋一および野下えみを中心とする「取締役等責任調査委員会」を設置することを決定しました。「取締役等責任調査委員会」は、既に当社を退任した取締役、執行役員を含めた法的責任の有無を判断し、しかるべき措置をとる所存です。

また監査役の責任については、本日開催の取締役会決議に基づき「監査役責任調査委員会」を立ち上げ、取締役等と同様に、その法的責任の有無を判断し、しかるべき措置をとる所存です。

なお、不正に関与した従業員については、新経営陣として厳正な処分を実施するべく、すでに外部弁護士チームによるヒアリング等の手続を進めております>

(文=有森隆/ジャーナリスト)

有森隆/ジャーナリスト

有森隆/ジャーナリスト

早稲田大学文学部卒。30年間全国紙で経済記者を務めた。経済・産業界での豊富な人脈を生かし、経済事件などをテーマに精力的な取材・執筆活動を続けている。著書は「企業舎弟闇の抗争」(講談社+α文庫)、「ネットバブル」「日本企業モラルハザード史」(以上、文春新書)、「住友銀行暗黒史」「日産独裁経営と権力抗争の末路」(以上、さくら舎)、「プロ経営者の時代」(千倉書房)など多数。

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