モスバーガーが、韓国国内の店舗内で使用していたトレーマットに、「安心してお召し上がりください。モスバーガーコリアは日本産の食材を使用しておりません」と記載していたことが大きな波紋を呼んでいる。
モスバーガーを展開するモスフードサービスが10月12日に発表したところでは、韓国では2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、一部の日本産食材を輸入規制しているが、モスバーガーで「輸入規制品を使っている」という誤った情報が流れたため、その誤解を解くためにこのような表現を行ったという。以下がモスフードサービスの公式発表文。
「2018 年 2 月以降、韓国のモスバーガー店舗で輸入規制がかかっているはずの日本食材を使用しているなどの誤った情報が韓国国内で流れ、SNS を中心にご批判をいただく事態となりました。これを鎮静化するため、4 月から 9月中旬まで、韓国の店舗(8 月末時点 13 店舗)にてこのトレーマットを使用いたしました」
また、インターネット上を中心に批判が高まっていることを受けて、「誤った情報の流布を払拭するための緊急の表記だったとはいえ、誤解を招く表現だったと反省しております」と謝罪している。
モスフードサービスの本社は日本にある。韓国では合弁会社が店舗を展開しており、現地法人の判断で行っていたとはいえ、本社の監督責任を問う声は高まっている。
ビジネスジャーナル編集部がモスフードサービスに問い合わせたところ、以下のように回答があり、韓国でこのような表記のトレーマットが使用されていることを日本本社では把握していなかったと説明している。
「日頃よりご利用いただいておりますお客様ならびに多くの皆様にご不快な思いをさせてしまいましたことを心よりお詫び申し上げます。日本本社では、本件表記について恥ずかしながら把握が出来ていない状況でございました。今後、このようなことが無いよう、チェーン本部として指導を徹底してまいります」
ちなみに、福島県産食品の輸入制限をしている国や地域は、中国、香港、台湾、マカオ。一部輸入制限をしているのは、韓国、シンガポール、アメリカ、フィリピン。福島県産の農作物については、放射性物質の検査結果がすべて公開されているが、いまだに東日本大震災前と比べて流通は低迷している。
農林水産省、復興庁、経済産業省が連名で販売促進を強化する声明文を発表するなど、風評被害の減少に向けて動いているなか、さらに日本産食品の評価を落としかねない今回の騒動。ネット上には、「モスバーガー好きだったのに残念だ。もう二度と行かない」といった批判が殺到し、同社を擁護する声は少ない。また、「日本産食材の安全性を説明すべきなのに、日本産を使っていないから安心してくださいっていうのは許せない」など、風評被害の拡大を懸念する声も多い。
モスバーガーの店舗では今夏、腸管出血性大腸菌O121による食中毒が相次いで発生し、保健所から営業停止処分を受ける店舗が出るなど評価が急落した。そこから立て直そうとしている最中に、新たな火種が起こったかたちだ。
(文=編集部)