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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

無償と有償、東京五輪ボランティア「1000円支給」を批判するのはナンセンスだ

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=武松佑季
無償と有償、東京五輪ボランティア「1000円支給」を批判するのはナンセンスだの画像1東京五輪 HP」より

 安いもののほうが消費者の関心を引くのは商売の常だが、それが無料にまでなると勝手が違うのだろうか。子どもやその親向けに無料で食事や団欒を提供する社会イベント「子ども食堂」が、無料だったものを参加費10円としたことで、これまでよりも多くの参加者が集まり話題となった。

 イベントを手掛ける森哲平氏によると、「子どもは自分で払うのが楽しいという側面があるみたい」という分析のほか、「無償には抵抗ある人が多い」「長く続けるなら有償がよい」といった声が寄せられたとのこと。企業活動や社会活動にとって有償にするというのはどういった意味があるのか。立教大学経営学部教授でマーケティングが専門の有馬賢治氏に話を聞いた。

無料はコンテンツの成長を止める

「“タダより高いものはない”と古来よりいわれるように、無料でモノが提供されることで一種の気持ち悪さを覚える人が一定数います。さらに、他人から無料で提供されることによって自尊心が傷ついたり自己肯定感が揺らいだりするといった感覚は、大人でも子どもでも少なからず備わっているのではないでしょうか。『子ども食堂』が少額でも対価を求めることで逆に参加が促進させられたのは、そういった抵抗感を減らせたからでしょう」(有馬氏)

 実はお金を払うことは、このようなケース以外にも効果的に働くことが多いと話す有馬氏。現在は、インターネットでさまざまなコンテンツを無限に楽しめる無料が主流の時代。だからこそ、有償であることの意義を考え直すべきと強調する。

「お金を払わないと、ユーザーは『無料だからしょうがない』と妥協してしまい、よほどの不満がない限り意見をすることもなくなります。また、サービスを提供する側も『無料なんだから文句を言うな』という心理が働きやすくなります。この連鎖が増幅されていくと、サービスの質的向上を止めてしまうことにもつながると思われます。たとえ少額だとしてもお金を払えば、ユーザーは自身が客だという意識が芽生えます。一方、サービスを提供する側も、対価をもらっている以上は一定程度の責任を果たさなければという意識が芽生え、ユーザーを満足させようという向上心が育つと考えられます」(同)

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