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ZOZOTOWN、企業としての信用低下が深刻…ゾゾスーツは一瞬で撤回、PBゾゾは納期遅延

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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ZOZOTOWN、企業としての信用低下が深刻…ゾゾスーツは一瞬で撤回、PBゾゾは納期遅延の画像1ゾゾスーツ(「ZOZO オフィシャルサイト」より)

 自宅で全身を自動採寸できるとして話題を集めた「ゾゾスーツ」。しかし、ゾゾスーツは失敗に終わった。何をもって失敗とするかは人によって違うだろうが、少なくとも筆者は「ゾゾスーツは完全に失敗に終わった」と思っている。そうだとして、なぜゾゾスーツは失敗に終わったのか。

 言わずもがなだが、ゾゾスーツは、衣料品通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZO(ゾゾ、旧スタートトゥデイ)が開発した採寸用のボディースーツだ。ゾゾスーツで採寸して同社のプライベートブランド(PB)「ZOZO(ゾゾ)」の服を注文すれば、ジャストサイズの服が届くということで注目を浴びた。

 初代ゾゾスーツは、スーツに内蔵された複数の伸縮センサーが体の各部位を計測するというものだったが、技術や費用の面で量産が難しいことから生産を終了させた。代わりに、スーツ全体に施されたドットマーカーをスマートフォン(スマホ)のカメラで360度撮影して全身を計測するゾゾスーツを開発し、無料で配布してきた。

 そんなゾゾスーツに関し、前澤友作社長が2018年4〜9月期の決算説明会で注目の発言をした。「今後はゾゾスーツなしで購入できるようになる」というのだ。新技術を採用することにより、ゾゾスーツは不要になるという。これまでに配布したゾゾスーツから得られたデータ群に加え、身長や体重などの基礎情報と既存製品に対して消費者から寄せられた情報を活用することで、最適なサイズ提案が可能だという。

 ゾゾスーツが不要になるため、ゾゾスーツの配布枚数を大幅に減らす。当初、今期に600万〜1000万枚を配布する計画だったが、最大で300万枚に抑えるとした。これにより、約70億円かかる予定だったコストは40億円まで減らせるという。ゾゾスーツは今後、利用者の特性を知るためのデータ収集に利用し、「無料で大量にゾゾスーツをばら撒くことは極めて近い段階でやめる」(前澤友作社長)という。

 今後、ゾゾスーツがなくてもぴったりサイズの服を注文できるようになるのであれば、わざわざゾゾスーツを着用してスマホで全身を撮影するという手間をかける人は激減するだろう。しかも、ゾゾスーツで計測しても誤差が生じるとの指摘が相次いでおり、計測の正確性を疑問視する声が少なくない。今後、計測精度が向上する可能性はあるだろうが、近い将来にスーツが有料になるのであれば、たとえ計測精度が向上したとしても、お金を払ってまで利用する人がどれだけいるのか甚だ疑問だ。

ゾゾスーツは80億円かけた「おもちゃ」

 わざわざゾゾスーツを着るという手間をかけなくても全身を採寸できる技術が開発されていることも、ゾゾスーツ不要論を加速させることだろう。

 たとえば、紳士服大手のコナカはスマホのカメラを使って服のサイズを自動採寸できるアプリを開発した。撮影された体形画像を基に、人工知能(AI)が寸法を割り出すというものだ。まずは一人ひとりの体形に合った、ぴったりサイズのワイシャツの販売を始めたが、採寸にあたりゾゾスーツのようなスーツを着る必要はなく、ワイシャツとパンツを着用したまま4枚の写真をスマホで撮って、身長など数項目の情報を入力するだけでサイズ提案がされるようになっている。今後は、紳士用のスーツの販売も予定しているという。

 学生服メーカーの光和衣料は、学生の身長や袖丈などの体形データを瞬時に自動採寸する3Dのボディスキャナーを使ったオーダーメードの学生服の生産を行っている。カメラを内蔵した3本の柱の中央に人が立つだけで採寸できるのだが、わずか0.5秒で全身の約100万カ所を自動で計測するという。得られた体形データを基に学生服がつくられる。この自動採寸技術は、衣料品店の店舗などで今後使われる可能性がある。その場合、全身を採寸してもらいたい人は、何かのついでに店舗に立ち寄って自動採寸してもらえばいいだけだ。

 こういった技術の普及により、ゾゾスーツの必要性は今後急速に低下していくだろう。ゾゾスーツで採寸して注文する人は極端に減るのではないか。それどころか、筆者はほぼ皆無になるとみている。

 そうなると、ゾゾスーツは利用者の特性を知るためのデータ収集しか価値がなかったことになる。仮に今期のゾゾスーツにかかる費用が、ゾゾの説明どおり40億円だったとして、それがデータ収集のための費用として適切だったかは、疑問視せざるを得ない。宣伝広告の意味合いもあるだろうが、それを含めても正当化できる金額ではないだろう。

 また、ゾゾスーツ絡みの費用は40億円にとどまらない。初代ゾゾスーツの失敗で18年3月期に43億円の特別損失の計上を余儀なくされている。なお内訳は、製造にかかる固定資産の減損損失として14億円、不要となった部材の棚卸資産評価損として2億円、共同開発先のストレッチセンス社の業績不振による投資有価証券評価損として18億円、ストレッチセンス社に支払い済みの前渡金の評価損として6億円だ。

 もっとも、これらの費用はゾゾにとっては大した金額ではないのかもしれない。同社の18年3月期の純利益は201億円にも上るためだ。しかも、この201億円は先述の43億円の特別損失を計上した後の利益だ。そのため、ゾゾスーツにかかった費用は同社の経営の根幹を揺るがすほどではない。だが、ゾゾと同規模の売上高の企業であれば、最終赤字に陥ってもおかしくないレベルの費用だ。軽々に必要経費だから仕方がない出費とはいえない。

 こうしたことから筆者は、ゾゾスーツは完全に失敗に終わったと考える。なお、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は日本経済新聞でゾゾスーツについて「あれはおもちゃだ」と一笑に付している。そのようなかたちで終わったといえるのではないか。

 肝心の「PBゾゾ」もつまずいている。18年4〜9月期のPB事業の営業損益は70億円の赤字だった。また、7〜9月期の売り上げは、15億円の目標に対して5億4000万円にとどまった。15億4000万円の受注があったが、生産の不備により商品の発送に遅れが生じたことが影響したという。納期遅延は生産体制を強化するなどで年内には解消するとしている。

 それにしても、目標を達成するために見切り発車で受注を始めた感が否めない。話題のPBだから納期が多少遅れても大丈夫だろう、という考えで受注を始めたようにみえる。目標達成ありきだったのではないか。もしそのように消費者に捉えられてしまったら、信頼の低下により今後の販売は厳しくなるだろう。さらに、今期のPB売り上げ目標を200億円としているが、その達成も危ぶまれる。また、ゾゾスーツに代わる新技術が大したことがなければ、目標達成はより困難になるだろう。ゾゾは難しい局面に差し掛かったといえそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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