19日、東京地検特捜部が日産自動車のカルロス・ゴーン会長を逮捕した。自身の報酬を有価証券報告書に過少に記載するなど、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いがあるという。具体的には、2011年3月期~15年3月期の各連結会計年度の報酬額は計約99億9800万円であったにもかかわらず、関東財務局へは計約49億8700万円と記載した有価証券報告書を提出。約50億円も過少に申告していたという。
日産の西川広人・社長兼最高経営責任者(CEO)は同日夜、記者会見を開き、内部通報を受けて社内調査を行った結果を検察に報告し、検察当局と協力して調査を進めてきたと説明。さらに、「(ゴーン氏は)目的を偽って私的な目的で当社の投資資金を支出したという不正行為、それから私的な目的で当社の経費を支出したという不正行為」もはたらいていたと明かした。ジャーナリストの河村靖史氏は、次のように解説する。
「会見では触れられていませんでしたが、今回の不正は昨年発覚した無資格者による完成車検査の問題を調査する過程で判明したといわれています。経営陣のなかでも限られたメンバーで内々に調査を進めた結果、“完全にクロ”であることを示す証拠が見つかったことで、検察への報告に至ったようです。一部では、日産が2017年3月期の税務申告をめぐり約200億円の申告漏れの指摘を東京国税局から受け、日産が国税不服審判所に審査請求をしていることに対する国税の“報復措置”との見方もありますが、今回の件では国税が関与する隙きは見当たらないので、その可能性は低いでしょう」
日産といえば、昨年9月に検査不正が発覚した際も、ゴーン氏はその対応を西川社長らに押し付け、自身は責任追及を逃れたとして批判を浴びた。また、2014年3月期決算が予想を大幅に下回った際、当時ゴーン氏に次ぐNO.2で日本人トップだった志賀俊之COO(最高執行責任者)を事実上更迭するなど、いつも自身は責任を取らずに部下に責任を取らせ、さらには反抗的な人物を子会社の販売会社に飛ばすなど、その強権的な手法に社内で不満がたまっていたともいわれている。今回のゴーン逮捕の背景には、そうしたゴーン氏と他の経営陣との軋轢も影響しているのだろうか。
「直近では、ゴーン氏と他の経営陣の間で、特に目立った軋轢はありませんでしたが、西川社長としては、絶対的な権力者であるゴーン氏をこれで追い落とせるという確信があったからこそ、検察に報告したのでしょう。会見での西川社長のサバサバとした表情からも、そのように感じます」(同)
異常に高額だった役員報酬
では、今回の逮捕が今後の日産の経営に影響を与える可能性はあるのだろうか。