日産自動車の会長を務めるカルロス・ゴーン氏は、今年も10億円以上の役員報酬を日産から受け取るようだ。そして、“ミニ・ゴーン”と揶揄されている西川廣人社長兼CEO(最高経営責任者)は、これを黙認する見込みだ。役員の報酬は報酬委員会が決めることになっているが、日産の同委員会はゴーン氏の高額報酬を容認する“隠れ蓑”となっている。
仏政府の意向に添って、ゴーン氏は日産を仏ルノーに“献上”しようとしているとの報道もあるが、事実であれば日産の役員として利益相反にあたる可能性もある。7月中旬に予定されている安倍晋三首相とエマニュエル・マクロン大統領の首脳会談で、「日産とルノーの問題」が議題のひとつになるといわれている。だが、「公式の発表では、両政府ともこの件には触れないことになっている」と永田町からは伝わってくる。
日本経済新聞の本社コメンテーターである中山淳史氏が、5月11日付「オピニオン」欄で「フランスが国として、どうしても日産を傘下に置きたければ、ルノーを通じて新たな成長戦略を示し、TOB(株式公開買い付け)などで、ほかの日産の株主の判断を仰ぐことだろう」と指摘する。
不可解なのは、西川氏の発言だ。西川氏は5月14日、18年3月期決算発表の席上で、仏ルノー、三菱自動車との3社連合の枠組みについて「2018年度(2019年4月)以降、資本構成の変更を含めて、できるだけ早いタイミングで次世代に渡せる仕組みにしたい」と表明した。三菱自動車は付け足しである。もしゴーン氏の意向に添って日産をルノーに売るつもりであれば、西川氏も社長兼CEOの職務に忠実とはいえない。彼も利益相反の罪を犯していることになる。
西川氏は「次のリーダーに変わってもアライアンスが維持できる仕組みをつくらなければならない」と強調。「合併を協議している事実はない」とも述べたが、資本構成の変更が合併(経営統合)につながるのではないかとみる向きも多い。
5月15日付日経新聞は「(西川氏が)出資比率を見直す可能性に言及する一方、両社合併については否定的な立場を鮮明にした」と報じているが、国内の自動車メーカー幹部は、「日経は日産の報道で何度、読者をミスリードしてきたことか」と憤る。