16連射の高橋名人による提言「ゲームは1日1時間」…その後ハドソンが打ち出した5つの標語とは?
あなたにとって「懐かしい」とは、どんな情景でしょうか? 1970~90年代の「懐かしい」を集めたのが「ミドルエッジ」。あなたの記憶をくすぐる「懐かしい」から厳選した記事をお届けします。
今回のテーマは、「ゲームは1日1時間」。プロゲーマーの走り・高橋名人が発したメッセージとして有名なこの言葉ですが、その続きとして「5つの標語」が発表されたのを覚えているでしょうか?
ゲーム屋から非難ごうごうだった「ゲームは1日1時間」
ゲームは1日1時間!……おそらく、この言葉がリアルタイムで発信された世代以外でも、幼少期、ゲームに熱中するあまり、お母さんから口酸っぱく言われたことのある人は多いのではないでしょうか?
この標語の発信元は、ご存じ高橋名人。「16連射」「毛利名人との名勝負」など数々の伝説を残し、80年代の子どもたちを熱狂させてきた、日本におけるプロゲーマーの先駆的存在です。
高橋名人といえば、元ハドソン社員として有名。この発言をした当時も、同社に所属していたため、「ゲーム会社の人間がゲームのプレー時間を制限するとは、どういう了見か!」とゲームショップなどからクレームが来たといいます。今だったら、子どもの「ゲームやり過ぎ」を抑止するのは一般常識ですが、当時はまだテレビゲーム黎明期。ゲームのやり過ぎが子どもたちの知育・精神衛生にどのような影響を及ぼすかなど検討さえされなかった時代なので、致し方ないところです。
ハドソン製ゲームのトリセツにも記載された「5つの標語」
こうしたクレームを受けて、ハドソンでは役員会議が開かれることに。そこでも「子どもたちへゲームばかりではなく、ほかのことにも目を向けられるようなメッセージを届けよう」という方針が固まり、その結果、以下のような“高橋名人の標語”が作成されることになりました。
(1)ゲームは1日1時間
(2)外で遊ぼう元気よく
(3)ぼくらの仕事はもちろん勉強
(4)成績上がればゲームも楽しい
(5)僕らは未来の社会人!
なんとも、父兄諸子およびPTAが喜びそうな文言ではないでしょうか。「僕らは未来の社会人」と結んでいるように、立派な大人になるためには、学生の本分である「勉強」を軸に、ゲームだけではなく、さまざまな経験(外で遊ぶこと)が必要だと唱えているのです。
以後、この5つの標語を基にしたものが、ハドソン製ゲームソフトの取扱説明書などに「名人からのMESSAGE」として掲載されることになります。憧れの名人がそういうのだから、どんなヤンチャ小僧でも従わざるを得ません。
WHOがゲーム依存を病気と認定
なお、時を隔てて2018年6月、世界保健機関(WHO)がまとめた改訂版国際疾病分類「ICD―11」最終案で、「ゲーム依存」が「病気」として正式に認められました。具体的には「ゲームをする時間などを自分でコントロールできない」「ゲーム以外の出来事の優先度が低くなる」「日常生活に支障をきたしてもゲームを優先する」といった状態が12カ月以上続くと、「ゲーム障害」扱いになるのだとか。30年以上前に発していた高橋名人のメッセージは、間違っていなかったというわけです。
eスポーツブームの昨今。未来のプロeスポーツプレイヤーを夢見て「1時間じゃ足りないよ!」と親にたてつく子も多そうな今の時代に、高橋名人の標語は、より必要になるのかもしれません。とはいえ、その高橋名人自身が一般社団法人e-sports促進機構代表理事を務めているというのが、ちょっと複雑ですが……。
この連載では、次回以降も皆さまの脳裏に「懐かしい」が蘇りそうな記事を提供して参ります。「こんな記事は?」「あのネタは?」といったお声も、お待ちしておりますので、よろしくお願いいたします。
(文・構成=ミドルエッジ)
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