「余計なこと」を捨てて「あり得ないこと」を目指す…ビジネスの迷いと恐怖を断ち切る方法
どのようにビジネスの戦略を立てて収益を伸ばしていくかというのは、経営者にとって悩みの種だろう。特に中小企業は、なんとか収益をあげるために手広く展開しようとして、逆に疲弊してしまいがちだ。
ケンズカフェ東京のオーナーシェフである氏家健治氏が執筆した『余計なことはやめなさい!』(集英社)は、経営者にとって「何をやめるべきか」「どこにフォーカスすべきか」という「選択と集中」の教科書的な一冊である。がんばっているのに成果が出ない、いろいろなことを手広くやりすぎて失敗する。そこから抜け出すには、「どこにお金をかけるか」の選択が大切になる。
今年創業20年を迎え、最高級のガトーショコラのみで年商3億円の売り上げを見込むケンズカフェ東京の経営の「軌跡」は、まさに「選択と集中」のお手本だ。氏家氏の手法を4回の連載で紹介していく。
第4回の今回は、「ビジネスを成長させるために経営者がすべきこと」がテーマだ。
「余計なこと」を見つけるためにすべきこと
「余計なこと」をやめ、「宣伝活動に注力する」。ケンズカフェ東京のビジネスの進め方を大まかに言うならば、こうだ。
しかし、それは氏家氏だからこそできたことでは? と考える人は少なくないだろう。自社や自分の状況はまるで違う、と。だが、それは違う。一歩引いて客観的に状況を見つめ直せば、先行きは好転するはずだ。
「余計じゃないこと」。それは経営者にとって「本質的なこと」であり、「重要なこと」である。
しかし、「本質的なこと」と言われても漠然としている。これをもう少し具体的に述べると、「あなたの仕事や人生を真に豊かにするもの」となる。
どんな仕事であっても、無数の選択肢の中からその仕事を選んだのは事実。少しでも惹かれるものがあるはず。その仕事の喜びとは何か、考えてほしいと氏家氏は訴える。
ちなみに、氏家氏の本質は「とびっきり美味しいもので、きちんと稼いで、お客様も自分も幸せになること」だという。
もし、本質が見えてこないときは、単純に考える時間が足りないのかもしれない。そこで、まずは週に1回でもいいから、自分のために使う時間を確保し、自分は何がしたいのか、どこに向かいたいのか、誰に喜んでほしいのかを考えよう。
自分と向き合う時間をつくることが、本質を見つけることに必要なこと。そこから「余計じゃないもの」「余計なもの」が見えてくるというわけだ。
もうひとつ、氏家氏が述べているのは、すべての仕事は「あり得ないこと」を目指すべきだということ。
それを体現する代表例が、ケンズカフェ東京のガトーショコラだ。本場フランス並みのガトーショコラが日本になかったことから実現させたケーキで、高級チョコレートを惜しみなく使い、とろけるような食感が味わえる。
また、それを包むパッケージも「あり得ない」レベルだ。箱も手提げ袋も海外のラグジュアリーブランドのパッケージを参考にしており、食べる前から「これは絶対に美味しいに違いない!」と思わせてくれる。
実は、そのデザインはプロのアートディレクターに依頼しているという。高級ジュエリーなどのブランド品を入れるにふさわしいパッケージを、ガトーショコラでつくってしまったのだ。
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