「コーポレートガバナンス(企業統治)改革」は、2018年に4年目を迎えた。日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が、金融商品取引法違反容疑に続いて特別背任容疑でも逮捕された。“ゴーン事件”は、日産の企業統治の深刻な欠陥を浮き彫りにした。
15年は日本の上場企業にとって、コーポレートガバナンス改革元年として長く記憶される年となった。東京証券取引所は上場企業に対し、独立性が高い社外取締役を2人以上選ぶように促す「企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)」をまとめた。
独立性の高い社外取締役には、外部の目で株主の声を取り入れながら経営を監視し、企業の成長を後押しする役割が期待される。企業経営の規律を強め、収益力を高めていく欧米型のコーポレートガバナンスが、日本でも本格的に始まった。
独立性の高い社外取締役は株主の代弁者として、株主の意向に沿った経営を求めることになる。株主の意向とは「より多くの利益を出せ」「成長を続けろ」ということ。業績を十分に上げられない経営者に対しては苦言を呈し、圧力をかける。それでも駄目な場合には交代を強いる。これが独立性の高い社外取締役のもっとも重要な機能だ。
経営トップの解任基準のある企業はたった18%
日産には3人の社外取締役がいたが、機能しなかった。ゴーン前会長に異を唱えることができる人物はいなかったわけだ。会社全体で不正に走った東芝とは違い、日産は個人が会社を私物化し、私利私欲で暴走した。こうした時に、トップの解任基準を設けているかどうかが重要になるが、日産にはそれがなかった。
東京証券取引所が18年6月に改定した企業統治指針は、経営トップなどの選任に加えて、解任の方針や手続きについても新たに説明を求めた。
指針の改定を踏まえ、世界的なコンサルティング会社の日本法人エゴンゼンダー(東京・千代田区丸の内)は東証1部上場企業に対し、18年6月末から8月下旬にアンケートを実施した。
回答した361社のうち、すでに選任の基準を設けた企業は33%だが、解任基準のある企業は18%にとどまった。
日本企業では、経営トップの選任・解任を社長やCEO(最高経営責任者)の専権事項とするケースが多い。日産は役員人事や役員報酬をゴーン容疑者が独断で決めていた。西川廣人氏は社長兼CEOでありながら、人事権や予算はゴーン容疑者に握られ、“ヒトとカネ”を采配できなかった。