日本銀行が金融緩和のために行っているETF(上場投資信託)の年間の買い入れ額が2018年に初めて6兆円を突破し、コントロール不能の領域に突入している。日銀がETFの買い入れを開始したのは、10年の白川方明総裁時代。この時、日銀は株式市場のリスクプレミアム縮小をETF買い入れの理由とした。つまり、日銀がETFを購入することで、投資家のリスクに対する不安を後退させ、株式投資の促進を図ったのだ。当初は、年間4500億円の買い入れ額でスタートする。
黒田総裁が就任すると、13年4月から始まった異次元緩和で買い入れ額は年間1兆円に増額される。さらに、14年10月の追加金融緩和で年間3兆円、16年7月には現在の年間6兆円にまで引き上げられた。
ETFの買い入れについて日銀は、「株価の上昇は、資産効果などを通じて個人消費を押し上げるほか、企業の資金調達環境やマインドの改善によって設備投資を促すことが期待できる」とした。しかし、問題なのは、日銀による巨額のETF買い入れが“日本経済を崩壊させる爆弾”になる可能性を秘めていることだ。
株式市場では、日銀のETF買い入れについて、「TOPIX(東証株価指数)が前場に下落すると買い入れを行う」(株式市場関係者)と見られている。このケースでの買い入れが多いのも事実だ。つまり、株式市場には「株価が下がったら日銀のETF買いが入る」という日銀依存の体質が染みついてしまった。
しかし、ここには大きな錯覚がある。日銀は株価が下がったらETF買いを行っているので、常に利益が出ているように錯覚を起こしやすい。だが、たとえば日経平均が2万2000円から2万1500円に下がったときに買うのと、2万1000円から2万500円に下がったときに買うのとでは、買いを入れている水準は2万1500円のほうが1000円も高い。つまり、下がっているとはいえ、高い価格で買いを入れているということ。
株価が下落を始めれば、高い価格で買ったものは、より大きな含み損を抱えることになる。日銀のETF買いは、日々、下がったときに買いを入れているが、それは株価の絶対水準が安いところで買っているわけではない。株価が下がれば下がるほど、日銀の含み損は膨らみ続ける。