有利子負債削減策としてスプリントを連結決算から切り離す
孫氏は、熱しやすく冷めやすい。米携帯電話3位のスプリントを買収したときは4位のTモバイルUSも串刺しで買収して、世界の「携帯電話王」になる野望を抱いた。だが、TモバイルUSの買収は、米当局の不許可判断もあって頓挫。携帯電話への熱意は消えた。
AI(人工知能)革命を起こす投資が、孫氏の新たな情熱の対象となった。サウジのムハンマド皇太子をパートナーとして設立したSVFがAIの先進企業に資金を注ぎ込む。サウジマネーを活用して第2、第3の10兆円ファンドを構想している孫氏にとって、全米4位に転落したスプリントは、今や重荷でしかない。
SBGの連結有利子負債は2018年9月末時点で18兆円近くに上り、利払い負担は18年3月期に約5100億円に達した。格付けは投機的水準だ。有利子負債のうちスプリントが4兆6100億円と4分の1を占める。有利子負債の削減をするためスプリントを連結決算の対象から外すことにした。
スプリントはSBG、Tモバイルはドイツテレコムが、株式の大半を握る。合併は約6500億円規模の株式交換方式で行う。スプリントは新生Tモバイルの100%子会社になる。これにより、SBGは新生Tモバイルの株式を一部保有することになるが、スプリントは子会社ではなくなる。
社債が発行できず子会社上場で資金調達か
有利子負債削減のカードは、もう1枚あった。それがソフトバンクの上場だ。SBGの社債の格付けは「投機的」水準である。これ以上、社債を発行しようとしても、有利な条件で資金調達はできない。ソフトバンクを新規上場させ、市場から調達するのが早道だった。
SBGの有利子負債18兆円のうち、1年以内に返済や償還を迫られる長期借入金と社債は2兆5000億円。台所は火の車だ。SBGはソフトバンクの上場で2兆6000億円を調達した。投資家に損をさせてでも高値での公開の方針を貫いたのは、SBGの台所事情があったという指摘が多い。
ファーウェイ製品のリプレイス(置き換え)によるコスト増が重くのしかかる。ソフトバンクは国内通信大手で唯一、ファーウェイとZTEの基地局を使っている。ソフトバンクは中国製の基地局を数年かけて、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの製品に順次切り替えていく。2019年春以降に整備を始める次世代通信5Gの基地局も、中国製を排除し北欧2社に発注することになるという。