上場直前の12月6日には、大規模な通信障害を起こした。この障害発生後5日間で、約1万件の解約があった。そのため、市場関係者の間では上場延期が囁かれていた。
そして、株価への影響がもっとも大きかったのは中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)問題だった。
12月5日、米国の要請を受けたカナダ当局がファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を「対イラン制裁違反」容疑で逮捕した。
12月10日、日本政府は中央省庁や自衛隊が使う通信機器の調達に関する指針をとりまとめ、ファーウェイと中国の通信端末大手ZTE(中興通訊)の排除を、企業名は明記しなかったが事実上、決定した。翌11日、ソフトバンクは「政府の方針に準拠する」とのコメントを出した。
ファーウェイとZTEの製品は、米国が8月に政府機関やその関係企業での使用を禁止。11月には「日本を含む同盟諸国にもファーウェイ製品の使用と購入を中止するよう要請している」と、米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。米国政府の働きかけもあって、日本政府は情報漏洩など安全保障上の懸念のある機器を排除することにした。
トランプ政権が「ファーウェイを排除しろ」と警告
その際、米政府はSBGに「ファーウェイを排除しろ」と警告を出していたという。日本の大手メディアは報じなかったが、米国在住の起業家でブロガーの中島聡氏がメルマガ「週刊Life is beautiful」(2018年12月18日号)で米国の報道を紹介している。
携帯電話のスプリントとTモバイルUSとの合併に懸念を示す声が、米国政府内で出ているという内容だ。SBGはスプリントを買収し、TモバイルUSの買収を計画したが、結局、主導権をTモバイルUSの親会社、ドイツテレコムに渡すかたちで合併を進めていた。
「ここに来て、米国政府が米国内の無線通信ネットワークのインフラにファーウェイの通信機器を使うことに大きな(国防上の)懸念を示しており、5G無線通信網の構築に関してファーウェイと近い関係にあるソフトバンクが影響力を持ったままスプリントとTモバイルを合併させることには問題があると見ている人がいるのです」(中島氏のメルマガより)
12月11日、ソフトバンクが「政府方針に準拠する」というコメントを出した背景には、こういった米政府の圧力があったからとの見方だ。
同月17日、対米外国投資委員会(CFIUS)が携帯電話3位のTモバイルUSとSBG傘下で4位のスプリントの合併を承認した。合併承認には米司法省と米連邦通信委員会の承認も必要になるが、まずは最初の関門をクリアした。「ファーウェイ製品の排除をSBGが約束した見返りに、合併を認めた」と、米国の通信業界の有力者は受け止めている。