ソフトバンクグループ(SBG)の通信子会社ソフトバンクは2018年12月19日、東京証券取引所第1部に上場した。
SBGはソフトバンク株の売却で、株式の新規公開として史上最大となる約2兆6000億円を市場から調達した。だが、株価は初日から公開価格(1500円)を大きく割り込んだ。1株1463円で初値をつけると、その後は下落。終値は1282円と公開価格を14.5%も下回った。新規公開株を買った全員が上場初日に含み損を抱える“異常事態”となった。
12月10日、ソフトバンク株の売り出し価格が1500円に決まると「高すぎる」との声が噴出した。
「企業価値の指標であるEBITDA(税引き前利益+支払い利息+減価償却費)を基に算出すると、NTTドコモとKDDIの株価がEBITDAの5倍なのに対し、ソフトバンクは7倍近い。業界平均の5倍で計算したら1株1000円程度が妥当。上場後に公開価格割れとなれば、クレームが殺到する」と、アナリストたちは不安を口にしていた。
そして不安は的中した。ソフトバンクのIPO(新規公開)で儲かったのはSBGの孫正義会長兼社長だけだ。ソフトバンク株を買った個人投資家は全員、含み損を抱え、証券会社の営業担当者は顧客に謝って回るはめになった。
ちなみに、12月28日(大納会)のソフトバンクの終値は1358円。上場来安値は12月20日の1176円だった。
いっぺんに噴出したソフトバンクに対する不安材料
なぜソフトバンク株は、これほどまでに不人気だったのか。それはソフトバンクに対する不安要素が、いっぺんに出てきたからだ。
10月に発生した在トルコ・サウジアラビア領事館での記者殺害事件は、SBGにとって大きな不安材料となった。孫氏は、記者殺害を指示したとされるサウジのムハンマド皇太子(本人は全面否定)と「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」と名付けた10兆円ファンドを設立した。「事件を受けて、サウジマネーを忌避する投資先が出ている」(国際金融筋)という。
さらに、ソフトバンクにはネガティブな材料が山盛りだ。2018年8月、菅義偉官房長官が「携帯電話料金は今より4割程度下げられる」と発言。業界への値下げ圧力が強まるなか、NTTドコモが10月末、「2019年度以降の大幅値下げ」を発表した。対抗上、ソフトバンクは値下げを迫られ、収益の悪化が懸念される。