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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

日本製テレビが韓国サムスンらに駆逐された理由…高い技術力とプライドがアダに

文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer

日本メーカーにこそ強く求められるCMO

 近年、アメリカでは製品開発などにかかわる予算を制限しがちなCFO(最高財務責任者)の権限があまりにも強くなっていることに危機感を抱き、CMO(最高マーケティング責任者)を設置する企業が増加しているが、製造や開発サイドの力が強い日本の伝統的なメーカーにこそ、CMOが強く求められるはずだ。

 筆者はマーケティングにかかわる話を実務家とした際、「いやあ、トップに聞かせたい」と言われることがよくある。つまり、顧客視点より正しいと思うことを実行しようとしても、他部署との兼ね合いにより揉め、結局、上層部間での話し合いにより、潰されることが、たびたび起こっているというのである。たとえばテレビの場合、マーケティングにかかわるスタッフが懸命に消費者のニーズを探り、おしゃれな部屋に似合うデザインのテレビを求める人が多くなってきているという傾向をつかんだとしても、開発サイドから「美しい画面には黒いフレームが必要」との主張が通され終わってしまうという。

 もちろん、開発者がなんの情熱も持たず、単に消費者ニーズに従うだけで、素晴らしい商品が誕生するとは思わない。近年、すっかり定着してきた「お掃除ロボット」において、日本メーカーはアメリカの「アイロボット」に完全に出遅れたが、実は多くの日本企業は昔から、お掃除ロボットに関連するアイデアや技術を保有し、ある程度のニーズがあることも把握していたらしい。しかし、商品化しなかったのは火災などを引き起こす可能性がゼロとはいえないといった点を危惧したためだと聞いたことがある。

 こうした点を踏まえると、「技術的な細かいことはさておき、顧客視点を重要視し、思い切って商品化してみよう!」といった大胆な決断ができるCMOが、とりわけ長い歴史を持ち、調整型リーダーが増加し、保守的な傾向が増加している日本の大手メーカーにおいて強く求められるといえるだろう。
(文=大﨑孝徳/デ・ラ・サール大学Professorial lecturer)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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