それにしても、ホンダの新車販売におけるN-BOXの依存度は際立っている。全軽自協の統計を基にホンダの乗用軽自動車におけるN-BOXの販売比率を計算すると、約74%となった。そして、自販連統計と全軽自協の統計を基に計算したホンダの登録車と軽自動車の合計販売台数における軽自動車の比率は約50.4%となった。前述したように、ホンダの軽乗用車販売の約74%がN-BOXということを考えると、軽自動車であるN-BOXへの販売依存度がホンダ全体の国内販売ではかなり高くなっているといえよう。
軽自動車は薄利多売が大前提であり、新車販売のなかでも利幅が少ないことで知られている。そのため、ここのところスズキやダイハツでは登録車、特に小型車の販売も積極的に行っている。自販連統計を基にスズキとダイハツの18暦年締めでの登録車の販売台数を17年暦年締め実績と比較すると、ダイハツが125.5%、スズキが118.8%となっており、前述の事情を裏付けるような結果となっている。
薄利多売のなかで販売激戦区となっている軽自動車販売にのめりこみ過ぎればディーラーの収益を圧迫してしまうので、その意味でも登録車もバランスよく販売していきたいとするのがスズキやダイハツの戦略となっている。しかし、ホンダはひたすら軽自動車(というよりはN-BOX)の拡販を推し進めているように見える。これについて、業界の事情通も「なかなか理解しきれない部分がある」と語る。
軽自動車には維持費の安さなどの経済性を強く意識するユーザーも多い。そのため、仮にメーカー系正規ディーラーで新車として購入しても、割高イメージの強いディーラーでのメンテナンス料金を嫌い、街の格安車検業者や顔の利く整備工場、ガソリンスタンドにメンテナンスを任せることも多い。そうした事情から、軽自動車販売が増えると、今やメーカーが新車販売自体よりも収益面で重視するメンテナンス部門の収益を圧迫することにつながりやすい。
スズキやダイハツとホンダでは、業販店を通じた新車販売比率(業販比率)に違いがある。業販店とは、新車販売において提携関係を結ぶ整備工場や中古車専業店のことで、それらからの紹介や委託販売による業販比率がスズキやダイハツは高く、ホンダは低いとされている。
業販比率が高ければ、販売した新車のけっこうな割合が紹介先でメンテナンスを受けることになる。もともと、特に軽自動車では業販比率の高いスズキやダイハツでは正規ディーラーへの入庫率は高くはなかったようだが、収益改善の一環として、正規ディーラーでの販売機会が多く、そのままメンテナンス入庫も期待できる登録車の販売にも力を入れているのである。