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三菱UFJ、7千億円の巨額買収、生き残りかけた大勝負…金融の主役陥落、銀行の危機感

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 空運産業は、マクロ経済の動向や天候・感染症(SARSなど)の影響を受けやすい。そのため、リスクは相応に高い。一方、世界的に航空機の需要は増加するとの期待が高まっている。新興国における所得の増加などによって、世界的に航空旅客は増加傾向にある。そのニーズを反映してLCC(格安航空会社)の存在感が高まっている。加えて、省エネ型機種の導入が進むなど、航空機業界は大きく変化している。

 この状況はMUFGにとってチャンスだ。DVBバンクの航空機ファイナンス事業は、ナローボディー(通路が1本)の旅客機を筆頭に、リージョナルジェットなど多様な機種を扱っている。加えて、同行は南米や中東・アフリカなど幅広い地域をカバーしている。DVBバンクの航空機ファイナンス事業は収益源が分散され、MUFGが海外での収益力を強化するために重要な案件といえる。

他の銀行経営に無視できない影響を与えるMUFG

 世界各国でIT先端企業などがフィンテック事業に取り組んでいる。この状況が続くと、銀行から他の企業に顧客が流れ、銀行が必要とされなくなる日が来てもおかしくはない。MUFGはその展開にかなりの危機感を抱いている。MUFGが分散型のネットワークテクノロジーを活用したデジタル通貨の実用化を目指しているのは、そうした変化に適応するためだ。

 MUFGにはさらなる取り組みを期待したい。ポイントは、銀行が蓄積してきた信用審査・創造のデータやノウハウを生かし、金融のプラットフォーマーを目指すことだ。

 銀行は、個人や企業の信用審査に必要な知見を蓄積してきた。それを最大限に活用することが目指されるべきだ。特に、フェイス・トゥ・フェイスで銀行が企業などと接し得られてきた感覚などは、簡単にデータ化できるものではない。それは銀行にしかない“宝”だ。

 MUFGが信用審査などの経験をネットワークテクノロジーと融合させ、従来にはない、より高度かつ効率的な信用創造のテクノロジーを生み出すことができれば、ユーザーの満足度は高められるだろう。国内の銀行経営にはそうした発想があってよい。

 MUFGが新しい取り組みを進めることは、銀行経営の“常識”を変化させるだろう。大手行と異なり、地方銀行が自力で新しい取り組みを進めることは容易ではない。地方銀行にとって、他の銀行と経営を統合してシナジーの発揮を目指しつつ、海外事業などに関しては大手行とアライアンスを結ぶのが現実的だろう。

 国内最大手行を傘下に持つMUFGの新しい取り組みには、国内銀行業界の変化を促す触媒の役割があるといえる。MUFGがフィンテックや海外事業の面で優位性を示すことができれば、銀行業界におけるアライアンスの重要度が高まるのみならず、経営統合の加速化など業界再編も進むだろう。一見するとそうした変化に不安を感じる人は多い。しかし、変化が成長を促す。低金利・低成長に加え、世界経済の先行き不透明感も高まりつつあるなか、MUFGが積極的に新しい取り組みを進めることを期待したい。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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