世界で11億人以上のユーザを持つソーシャルネットワークサービス(SNS)世界最大手のFacebookは、2004年に米国で学生向けにサービスが開始され爆発的人気を呼び、06年には一般向けに広くサービス提供が開始されたことはよく知られている。そんなFacebook初の海外拠点として10年に開設されたFacebook Japanでは、 2000万人以上の国内ユーザを抱えるサービスの運用を、わずか30人の社員(2013年8月現在)で担っている。
そんなFacebook JapanのMedia Solutions Manager・中島歩氏に、
「知られざるFacebook Japanの実態」
「Facebook強さの秘訣、SNS業界トップを維持するための、さまざまな社内の仕掛け」
「Facebook Japanのお仕事とは?」
などについて聞いた。
–Facebookに入社されたきっかけについて教えてください。
中島歩氏(以下、中島) 私は、情報・調査関連の外資系企業に7年間勤めた後、中途採用でFacebookに入社しました。前の会社では、企業に対して、マーケティング戦略を推進していく際に、その戦略全体を見ながら、ネット、テレビ、印刷物などさまざまなメディアがある中で、「どのメディアミックスが費用対効果の面から最適か」という提案をしてきました。ただ、お客様との会話の中で、「ネットのROIはいくつか?」「テレビの予算をどれくらいネットにシフトすべきか?」というような話が頻繁に出てくるようになり、時代はテレビからネットにシフトしているのではないかと感じ、ネット系の会社に興味を持つようになりました。加えて、それまで7年間いろいろなことに挑戦してきましたが、できれば別の業種、他の企業で新たな挑戦をしたいという思いもありました。そこで、ネット系の会社についていろいろと調べ、最終的にたどり着いたのがFacebookでした。
–どのような理由でFacebookに決めたのですか?
中島 ネット系企業はたくさんありますが、日本市場ですでにある程度の地位を確立している企業がほとんどでした。でも当時のFacebookは、これから立ち上げというフェーズだったので、「新しいことに挑戦できるのではないか」と思いました。メディアに露出している情報からは「とても元気のある会社だ」という感じも受け、そういうところからも判断して決めました。
–外資系企業は、採用を決めるまでに何度も面接をするということを聞きますが。
中島 私の時も面接の回数は多かったですね。Facebookの採用では、人材を必要としている部署のチームメンバー全員や、場合によっては他の部署の人も面接します。そのように多くの人が面接し、キャリアだけでなく性格や相性なども考慮して、求める人材かどうかを判断するわけです。学歴だけに重点を絞っているわけではないようです。
●「Move fast」
–入社前に描いていたイメージと、実際に入社されて違いを感じたことはありますか?
中島 違いを感じることはありませんが、驚いたことはたくさんあります。例えば、提案から実行までがすごく速いこと。入社前から「IT業界の動きは速い」とは聞いていたのですが、これだけすごいスピードだとは想像していませんでしたね。
それを可能にしているのが「Move fast」。Facebookの経営理念の一つで、「とにかくアクションを起こせ」「素早く行動しろ」という意味です。例えば日本ではモバイルの普及率がすごく高いので、モバイルでも見られる広告が必要だということは昨年の時点でわかっていました。そこで、本国にそういう提案をしたところ、その数カ月後にはモバイル向け商品が完成していました。
また、社員の人数が少ないので素早く行動できるというところもありますね。組織は、人数が多くなると動きにくくなる部分もあると思います。Facebookは少人数でそれぞれが集中して進めているので、思ったよりも速く動くことができるのだと思います。
–Facebookの社風について教えてください。
中島 Facebookに対して、あるいはデジタルメディアに対してパッション(情熱)を持った人が集まっている会社です。しかもみんなモチベーションが高い。一方で、時に音楽を聴いたり、無料のドリンクやフードが常備されたキッチンに行っておしゃべりをしたり、上手にON/OFFを切り替え、すごくメリハリのある職場だと思います。
それから、新商品を開発している場合などは、完成するまでは社員にすら情報を明かさない企業も多いと思いますが、Facebookでは割と早い段階で、「こういうことを考えています」ということを全社員に伝えます。それに対して社員のほうから意見を出すこともあります。しかも、その意見をもとに仕様を変更するということもあります。すごくオープンで透明性がある会社です。
–外資系企業は、本国がすべて決め、海外拠点はそれに従うというイメージですが。