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そのために、米国や欧州の大手製薬企業は、ライバル企業の買収を繰り返してきた。スイスのロシュや米ファイザーなどはさらなる成長を目指して、積極的に企業の買収を行ってきた。大型の買収が繰り返され、巨大製薬企業(メガファーマ)はさらに巨大化し、世界の製薬市場は寡占化している。それに加え、他社が開発できていない新薬創出に向けて、大手製薬企業は有望と考えられるテクノロジーを持つ新興企業を買収することにも取り組んでいる。これは、将来に向けて“種をまく”ことに似ている。
買収の成否はすぐにはわからない。買収はしたものの、想定したように新薬開発が進まないことは多い。リスクを回避するために新たな買収が実行され、大手製薬企業はさらに巨大化する傾向にある。
規模の拡大という“宿命”を背負う第一三共
今回の発表は、第一三共の決意表明にほかならない。同社は、世界の製薬市場に本格参入し、成長期待が高い分野での収益獲得を目指すことを決断した。世界の市場で戦うために、競合企業の買収などによる規模の拡大は欠かせない。それは、メガファーマがしのぎを削る市場に参入する“宿命”だ。
今回、第一三共は買収ではなく、提携を選択した。第一三共はがん領域を成長の柱に位置付けている。同社が開発を進めるバイオ医薬品の一種、“トラスツズマブ・デルクステカン”はがん細胞を狙い撃ちする効果を持つと期待されている。
ただ、同社にはがん分野での経験が少ない。第一三共としては、自力で開発を進めたうえで、米FDA(食品医薬品局)をはじめとする各国当局からの承認を得ることができるか、かなり不安を感じているだろう。それだけに、経営陣は英アストラゼネカという経験豊富なパートナーを得られたことに安堵しているだろう。
世界のメガファーマとの競争に打って出ることを決めた第一三共は、アストラゼネカとの提携を通して今後の開発・治験・販売における協力体制を整備できる。加えて、第一三共がアストラゼネカから最大69億ドル(約7600億円)を受け取る。市場参加者の多くが、この提携内容を評価している。提携であるため買収よりもリスクが低く、第一三共に有利と見る参加者もいる。
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