マック1000円バーガーは成功だったのか?売上減ストップのカギはコンビニと外食?
マクドナルドにとっての高付加価値商材を考えた場合、世界中から食材を調達できるグローバル企業のメリットを生かして、他社や個人店には真似できない「グローバル食材(材料)・日本企画」を実現するべきではないか?
そのような意味では、今回1000円バーガーと同じタイミングで発表した「クォーターパウンダー ハバネロトマト」は、インパクトとしては悪くない。
しかし、以前世界各国のマクドナルドで提供していたご当地バーガーを売り出した「世界の(星マーク3つ)マック」キャンペーンのように、海外ではやったバーガーをそのままの形で投入するのはやめたほうがよい。寿司でもアメリカではカリフォルニアロールがはやるように、食の分野では、ローカライズ(その国、土地に合わせた味の改良)が必要になるのだ。
「グローバル食材・日本企画」の一例を挙げれば、日本でも知名度の高いイベリコ豚のベーコンを使った「イベリコベーコンチーズバーガー」や、柔らかい食感の山梨県の信玄鶏(しんげんどり)を使った「てりやきチキンバーガー」、メキシコの青唐辛子ハラペーニョを使った「ハラペーニョバーガー」といったように、王道のハンバーガーをベースに、素材に対するこだわり感を前面に出し、世界中の食材、調味料を組み合わせた商品などはどうだろうか。
いずれにしても、消費者に驚きを与え、心をつかむような食材、組み合わせを大胆に使用するなど、外食業界を牽引するマクドナルドだからこそのチャレンジをしてもらいたい。
●「Share of Mealtime」の向上
これまで述べてきた以外にも、成長につながる打ち手はまだまだある。スープやデザートの強化、アルコール投入といった「Share of Mealtime(食事時間のシェア)」の向上だ。マクドナルドというと、どうしても「朝昼夜どこかで1回食べれば十分」というイメージがつきまとう。午後にコーヒーとデザートを食べる「おやつタイム」のニーズ充足やスープによる軽食ニーズの充足、アルコールニーズへの対応、などが考えられる。マックシェイクやマックフルーリー、ソフトツイスト(ソフトクリーム)など、既存のデザートはワンパターンの感が否めず、改良の余地があるのではないか。
「本格的な(上質な)ハンバーガーを食べられるお店」というブランドイメージの向上をベースに置いた上で、さらに幅広い消費者のニーズを取り込む余地がある。
加えて、過去に実施した店内内装のリニューアルや店内インターネット通信網(Wi-Fi)の実装などでも実現してきた、「どれだけ居心地のよい空間、長居できる空間を作るか」ということを通じた「Share of Lifestyle」の向上こそが、マクドナルド成長のキーワードになるだろう。
私が代表を務めるストラテジクスパートナーズは、多くの企業の戦略を立案する戦略コンサルティング会社だが、経営幹部を派遣する形で会社の経営実務も担う。私も経営者としていくつもの事業を当事者の立場で切り盛りしてきたが、これまでに述べてきたような施策を実現するには、いろいろな問題や制約があり、多大な労力、苦労が必要だろう。
特に、マクドナルドのような外資系企業の場合、グローバル(本国)の承認を得られるかどうか、という現実的な制約は非常に大きな壁になるだろうが、マクドナルドの方々には消費者起点の論理でぜひその壁を乗り越え、「さすがマクドナルド」と日本の消費者にニュースと驚きを与え続けてほしい。これが実現できれば、マクドナルドはさらなる成長を遂げるだろう。
子供の頃よりマクドナルドを食べてきた“いちファン”として、マクドナルドのさらなる成功を切に願っている。
(文=山田政弘/ストラテジクスパートナーズ代表取締役)