最近の安川電機の業績は、ある意味では日本経済の縮図といってもよいかもしれない。2016年半ば以降、安川電機は、中国の設備投資需要を取り込んで業績を急拡大させた。同社をはじめ、産業用ロボットや半導体の製造装置、マザーマシンなどの産業用機械を手掛ける日本企業の業績は中国の需要を取り込んで、まさに“我が世の春”を謳歌したのである。
こうした企業の業績をはじめ、日本経済のかなりの部分が、海外の要因に依存してきた。国内の自律的な要因によって緩やかな回復を遂げてきたわけではない。中国における工作機械などへの需要は、日本経済の持ち直しを支える、非常に重要な要素だ。
今後、中国経済は徐々に持ち直す可能性がある。問題は、その際、安川電機などの業績がどうなるかだ。中国政府が工作機械などの内製化を重視していることを考えると、安川電機をはじめ日本企業を取り巻く競争は激化する可能性がある。先行き不透明感が高まるなか、トップがどのように新しい取り組みを進めるかが、同社の成長に無視できない影響を与えるだろう。
2018年後半、急速に悪化した安川電機の業績
2017年度決算期まで、安川電機の業績は好調だった。その理由は、中国政府が工場の省人化などに関する技術の導入を重視したからだ。中国が省人化を進める上で欠かせなかったのが、日本企業の技術力である。安川電機の収益の柱である“モーションコントロール”と“ロボット”の技術は、中国企業が省人化投資や効率的な生産プロセスを確立するために欠かせなかった。産業機械の制御などに関する安川電機の技術的な優位性こそが、同社の成長を支えた。
しかし2018年、安川電機の事業環境は急変した。特に同年後半、中国の需要が想定以上のマグニチュードで落ち込んだ。まず、世界的にスマートフォンの出荷台数が減少した。中国ではスマートフォン生産設備の稼働率が低下し、安川電機のサーボモータ需要が落ち込んだ。
加えて、米中の貿易戦争が中国経済を大きく減速させた。貿易戦争には、IT先端分野を中心とする米中の覇権国争いと、米国の対中貿易赤字の削減という2つの側面がある。特に前者に関しては長期戦の様相を呈してきた。