先行き不透明感が高まるなか、中国の家計や企業経営者は先行き懸念を強めた。2019年3月まで新車販売台数が9カ月連続で減少したように、貿易戦争は中国の需要を大きく低下させた。生産活動が停滞し、工場の操業度が高まりづらいなか、安川電機が手掛けるロボット需要は急速に落ち込んだ。
この結果、2018年度の安川電機の決算は減益だった。昨年度後半、他の工作機械メーカーなどでも、収益が大きく、かつ急速に悪化した。
安川電機をはじめとする工作機械メーカーなどの業績悪化は、国内景気に無視できない影響を与えている。内閣府が発表する景気動向指数は、それを確認する良い指標だ。2019年1月まで、一致指数は3カ月続けて低下した。これは、国内景気のモメンタムが徐々に低下していることにほかならない。日本経済の先行きを考える上で、中国の需要を取り込んできた安川電機などの業績動向はかなり重要だ。
安川電機の株価を支える外部環境の好転
業績動向だけに目を向けると、安川電機の減益懸念は根強く残るだろう。一方、同社の株価は、組織外部の要因に影響され、持ち直している。
まず、株価上昇の背景には、安川電機固有の事情とは異なる要素が影響している。何よりも大きいのが、海外投資家の日本株に対する投資行動だ。彼らは、国内株式市場の70%の売買を占める。2018年、海外の投資家はわが国の個別銘柄と株式先物を売り越した。特に、先物に関してはポジションをどこかで手じまう必要がある。昨年、先物を用いて日本株の売り持ち(ショートポジション)をつくった海外投資家は年初以降、徐々に売った先物を買い戻している。
その結果、国内の株式市場参加者の慎重な見方とは裏腹に、株価が糸で吊り上げられるように持ち直している。これが、新聞報道などで「先物主導で株価が上昇」と説明される背景要因だ。これは、安川電機だけでなく、日本全体の株価を下支えしている。
加えて、株式市場では、安川電機の業績に関する楽観も増えているようだ。投資家の間では、「安川電機をはじめ中国関連銘柄の業績は、昨年10~12月期が最悪期(底)だろう」との見方が増えつつある。
それを支えているのが、中国の景気対策だ。2018年、中国経済の成長率は28年ぶりの低水準に落ち込んだ。中国政府はインフラ投資と減税によって景気の浮上を目指している。昨年秋口以降、固定資産投資の増加ペースは高まりつつある。